研究課題/領域番号 |
25887052
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 独立行政法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
澤崎 郁 独立行政法人防災科学技術研究所, 観測・予測研究領域 地震・火山防災研究ユニット, 特別研究員 (30707170)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 前震 / テンプレート波形解析 / Hi-net / 高周波地震動 |
研究概要 |
本年度は、2002年から2011年東北地方太平洋沖地震(東北地震)直前までの気象庁一元化震源カタログの中から、マグニチュード2以下、最寄りのHi-net観測点までの震央距離5km以内、震源深さ20km以内の震源8万個以上を選別した。当初は2011年以降の記録も解析する予定であったが、東北地震後に全国的に地震活動が活発化しデータが膨大になったことから、今回は東北地震以前のデータのみを使うこととした。それぞれの地震カタログについて最寄り観測点の上下動記録のテンプレート波形を切り出し、これに15HzのハイパスフィルタをかけてS/Nを改善した。当初は3成分すべての記録を切り出す予定であったが、データ数が多くなりすぎること、解析上重要なP波部分は上下動に卓越すること、水平動2成分は収録装置の交換前後で方位が変化する可能性があることなどから、まずは上下動成分のみの解析を行うことにした。また、相互相関解析の信頼性の観点から、ハイパスフィルタのコーナー周波数を当初の予定の20Hzから15Hzに引き下げた。一部の観測点について、テンプレート波形と連続波形との相互相関関数を解析し、相関係数が0.5以上となる時間帯のリストを作成した。特に相関係数が0.8以上となる時間帯については、波形を切り出してその最大振幅を計算した。最大振幅は検出イベントのマグニチュード決定のため使用する予定である。 また、切り出したテンプレート波形および相互相関解析により検出した微小地震波形を蓄えるためのハードディスクを購入し、1kHz連続観測のためのデータロガーの扱い方を習得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、相互相関解析を完了しそのデータベースから内陸大地震と微小地震発生の関係を考察する予定であったが、解析に用いるデータが膨大であることから計算がまだ完了せず、目標までには至っていない。しかし、解析に必要なプログラムはほぼ完成し、ハードウェアも装備されていることから、数か月の計算時間を経て予定通りのデータベースが確実に作成される見込みとなっている。 テンプレート地震は400以上のHi-net観測点で記録されているが、この中のわずか8観測点で全8万個中約3万個の地震を記録している。これらの観測点は岩手・宮城内陸地震などの大地震の余震や伊豆半島における群発地震の記録などをとらえており、微小地震が空間的にきわめて偏って発生していることが分かった。これら一部の観測点について集中的に解析することで、研究全体の見通しが立てられると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
微小地震のデータベース作成においては、テンプレート波形の中で特に相関が高いもの同士を重複イベントとみなして解析対象から除くなどの措置により、計算時間の短縮を図る。 データベースが整備されたのち、相関係数が0.8を超える波形において最大振幅を計算し、テンプレート波形の最大振幅とマグニチュードの関係式から外挿して、検出地震のマグニチュードを決定する。これにより検出地震の位置、時刻、規模がすべて明らかとなる。次に、検出地震の時系列に着目し、マグニチュードからすべり量の積算記録を作成する。この積算すべり量から、大地震直前に顕著な応力集中が見られるかどうか、または顕著な応力集中が見られてもそれが大地震に結びつかない場合があるかどうかを検討する。 また、特に地震活動な活発な観測点については、1kHz連続観測の実施を試みる。これに先立ち、1kHz観測を行うことにより通常の地震がどのようにとらえられるかを理論、観測の両面から明らかにしておく。
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