大地震の直前には前震を伴うことがある。初動走時を用いた従来の震源決定手法では、マグニチュード(M)が1程度よりも小さい地震の検出が困難であるため、仮に微小な前震が発生していても検知されていない場合が多く存在すると考えられる。本研究課題では、すでに震源位置がわかっているM2以下の微小地震30万個余の記録をテンプレート波形とし、防災科学技術研究所のHi-net連続記録にMatched Filter法を適用して、微小地震データベースの構築を行った。 解析の結果、2000年10月から2014年6月までの期間中に約590万個の微小地震を検出した。これは同期間中に使用したテンプレート地震の個数の約20倍である。検出した微小地震のデータベースを基に、同期間中に国内で発生したM6.5以上の内陸地震5個を対象とし、本震直前に微小地震活動が有意に活発化するか否かを調べた。その結果、本震直前以外の期間にも本震直前と同規模以上の微小地震活動が生じる場合が存在し、群発的な微小地震活動を生じることがそのまま大地震の発生を意味するものではないことが分かった。また、微小地震活動の活発化が検知されないまま本震に至る場合も存在した。 この研究により、従来の手法では検知されない微小な地震のカタログを作成することができた。今後、このカタログを用いて内陸地震活動の特徴をさらに詳細に解析することができると期待される。一方で、微小地震活動の活発化が大地震の直前のみならず頻繁に生じていることも確認され、直ちに短期的地震予知への応用の道が開けるわけではないことも明らかとなった。
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