今年度は、昨年度発見した解析上の問題点を解決するべく、研究を進めた。 単色ノイズの問題を回避するために、複数の周波数帯での解析結果を統合することを試みた。まず、フィルタバンク方式によって得られた複数の周波数帯の波形について、極性解析を行う。そこで、多くの周波数帯で直線的な信号を検出した場合のみ、震央推定に用いることにする。ただし、それらの方位が互いにずれていることがありうるので、その整合については検討を要する。 地震計設置方位のずれや水平方向の地震波速度不均質構造の影響などによって、P波振動方向とP波到来方向にずれが生じることがあるが、その校正方法についても検討した。これまでは、気象庁一元化震源カタログに掲載されている既知の小地震を使用して、P波の振動方向と到来方向のずれを評価して、その平均値を校正に使用していた。しかし、振動方向と到来方向のずれは地震ごとにばらついている上に、到来方位ごとに系統的にずれている。これを整理しないと、校正には使えない。これら方位データの扱いには方向統計学の手法を応用して整理した。
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