共鳴光を照射したプラズモニックナノ構造体に発生する増強輻射圧を用いると、ポリスチレンナノ粒子や鎖状高分子、DNAなどを従来法である光ピンセット法よりも効率的に光捕捉できる。このプラズモン光ピンセットを昇華すべく、不揃いな構造やサイズを有する多様なナノ粒子の混合溶液から特定のナノ粒子を選別・捕集し、分光学的手法を用いて分析する新規な手法「プラズモン光クロマトグラフィー」の確立を目的とし研究を遂行した。
平成26年度において、前年度に設計・作成した金ナノホールアレイを用いた金属ナノ粒子の選択的光捕捉の実現に向けて研究を行った。金属ナノ粒子の捕捉過程を追跡するため、新たに高開口数の暗視野顕微鏡を導入し、捕捉位置での顕微散乱スペクトル測定システムを構築した。金ナノホールアレイは、そのホール直径ならびにホール間隔幅によりプラズモン特性を制御できる。実験の結果、特定のホール直径とホール間隔幅をもつナノホールアレイを用いると、金および銀ナノ粒子が光捕捉されている挙動を追跡することに成功した。金や銀などの貴金属ナノ粒子を捕捉すると、金ナノホールアレイとの間に新たなプラズモンが発現し、その結果が散乱スペクトルに表れていると示唆される。 この実験結果を裏付けるため、昨年度導入した有限要素法に基づく理論計算システムによる解析にも着手した。 これらから、さまざまな粒径をもつ金属ナノ粒子の混合溶液から、特定のサイズをもつ金属ナノ粒子を選択的に捕捉するプラズモン光クロマトグラフィーの実現に向けた萌芽的な結果を得た。
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