本研究では、プラズモニック光電気化学触媒を用いて、窒素の固定化によるアンモニアの光電気化学合成に関する研究について推進してきた。 平成25年度までの成果で、ニオブをドープしたチタン酸ストロンチウム単結晶基板を半導体光触媒として用い、金ナノ粒子の担持により局在表面プラズモン共鳴による光捕集効果を付与し、さらに助触媒としてルテニウムを用いたプラズモニック光電気化学触媒を用いて可視光の照射により窒素を還元してアンモニアを得ることに成功している。しかしながら、その反応活性は低く、また、副生成物である水素が大量に発生する為に反応選択性は極めて低かった。また、反応の促進のために犠牲ドナーとしてエタノールの添加が必要であった。 平成26年度は反応の選択性及び活性向上のため、既報の計算化学による予測を基に原子の吸着エネルギーに着目し、新規助触媒の開発を行った。助触媒をルテニウムからより窒素吸着が優位と予測されるジルコニウムに変更したところ、反応活性は6倍程度増大し、また生成物のほとんどは水素ではなくアンモニアとして得られたことから、反応選択性が著しく改善されたことが分かった。さらに、本系では犠牲ドナーとしてエタノールを用いなくても窒素還元によりアンモニアが生成することが明らかとなり、可視光を用いて水と窒素からアンモニアを合成するという、当初の目的を完全に達成した。
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