本研究では、大きさが1 nm台で特定の構成原子数(サイズ)のみ安定なCdSeマジックサイズクラスター(以下、MSC)の構造を明らかにする。核磁気共鳴法(NMR)を用いて、CdSe MSCのSe原子とCd原子の配置を明らかにすると共に、CdSe MSCを保護している分子が表面サイトとどのように結合しているのか解明する。これにより、CdSe MSCの特異な安定性を保護剤との相関も含めて包括的に理解することを通して物質科学に資することを目指している。 上記の目的を達成するために、同位体濃縮したCdSe MSCの合成と1H-77Se-113Cd MAS NMRプローブの開発を実施し、合成した試料を作製したプローブを用いて様々な固体NMRのパルスシーケンスとデータ取得手法により、表面サイトの同定や保護分子との相関の解明を行う。 平成26年度では、Cd前駆体水溶液を制御することにより保護剤であるシステインの状況を制御した試料を合成し、成長過程を追跡することで保護剤とCdSe MSCとの相関を得、さらに固体NMRを測定することでシステインのアミノ基がNH2とNH3+の状態をとるシステインがCdSe MSCを保護していることを明らかにした。 また77Seと113Cdのスペクトルがこれまで報告されてきたCdSeナノ粒子よりも幅広いことを見出し、予想以上に複雑な表面構造を形成していることを明らかにした。さらに幅広いNMRスペクトルを効率よく測定できる手法を開発した。現在、開発した手法を組み合わせることでCdとSeの相関をNMRにより測定し信号の帰属を行っている。
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