研究課題/領域番号 |
25888013
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
東 正信 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10711799)
|
研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
キーワード | 光電極 / 水分解 / ドーピング / キャリア密度 / 可視光 |
研究概要 |
金属酸窒化物半導体には、可視光吸収と水分解に適切なポテンシャルを有したものが多く、可視光水分解用の電極材料として有望である。申請者らはこれまでに、複合型金属酸窒化物半導体であるBaTaO2Nに、高温水素還元処理を施すことにより、アニオン欠陥の増加、つまりドナー密度が増加することで、光電流が向上することを見出してきた。しかし、800℃という高温処理が必要なため、キャリア密度の精密な制御が困難であった。本研究では、BaTaO2Nに異種金属をドーピングすることにより、キャリア密度を制御し光電極の高性能化を試みた。 各種金属のドーピングを行ったところ、モリブデンまたはニッケルをドーピングすることで光電流が顕著に向上することを見出した。XRD測定の結果から、モリブデンはタンタルサイトへ、ニッケルはバリウムサイトへドーピングされていることが示唆された。また、電気化学測定により、モリブデンまたニッケルをドーピングすることによって、未ドーピングの場合と比べ、ドナー密度が増加することが明らかとなった。モリブデンドーピングによるドナー密度の増加は、5価のタンタルサイトに 6価のモリブデンが入ったためと考えられる。一方、ニッケルの場合は、モリブデンの場合とは異なり、イオン半径の小さい2価のニッケル(69 pm)が、イオン半径の大きいバリウム(135 pm)サイトへドーピングされることにより局所的に構造が歪み、その歪みを解消するためにアニオン欠陥が生じたと考えている。これらドーピングした電極に、酸素生成助触媒である酸化コバルトを担持させることにより光電流および安定性が向上し、水分解が進行した。これらの水分解活性は水素還元処理を施した未ドープの光電極より高かった。 このように、高温水素還元処理を必要とせず、モリブデンまたはニッケルをBaTaO2Nにドーピングすることにより高性能な電極が作成可能となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バリウムタンタルオキシナイトライド光電極の水分解活性を向上しうる適切なドーパントとして、モリブデンまたはニッケルが有望であることを見出すことができた。また、この活性の向上は、モリブデンおよびニッケルのドーピングによるドナー密度の増加に起因することを明らかにすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本来、ドナー密度の向上を目的とした異種金属のドーピングは、より高価数の金属種をドーピングするのが一般的であるが、今回のニッケルドーピングのように、同価数の場合においてもドナー密度が増加し、それに伴い光電流が向上することがある。そのため、さらなる適切なドーパントの探索を行い、ドナー密度が増加する理由について詳細な検討を行う。また、TaONやTa3N5などの他の(オキシ)ナイトライドについても異種金属ドーピングをおこない、応用展開を図る。 次に、光電極の性能評価のみならず、粉末光触媒として活性(各種還元および酸化犠牲剤を用いた水素生成反応および酸素生成反応)を検討することによって、光電極系と粉末系の差異について考察し、今後の光触媒粉末および光電極材料の設計指針の知見を得る
|