研究課題
金属酸窒化物半導体には、可視光吸収と水分解に適切なポテンシャルを有したものが多く、可視光水分解用の電極材料として有望である。これまでに、複合型金属酸窒化物半導体であるバリウムタンタルオキナイトライドBaTaO2Nに、高温水素還元処理を施すことににより、アニオン欠陥の増加、つまりドナー密度が増加することで、光電流が向上することを見出してきた。しかし、800℃という高温処理が必要なため、キャリア密度の精密な制御が困難であった。本研究では、BaTaO2Nに異種金属イオンをドーピングすることにより、キャリア密度を制御し光電流の高性能化を試みた。各種金属イオン(Mo6+、W6+、Cr3+、Fe3+、Ni2+、Cu2+、Zn2+)のドーピングを行ったところ、Mo6+またはNi2+をドーピングすることにより未ドープの試料と比べ光電流が顕著に向上することを見出した。電気化学測定よりこれら金属イオンをドーピングすることにより、ドナー密度が増加しており、バルク内での電子移動効率が向上したため光電流が向上したと考えられる。Mo6+ドーピングによるドナー密度の増加は、Mo6+がTa5+サイトへ入ったたためと考えられる。一方、Ni2+の場合は、XRD、XPS、元素分析の結果から、Ni2+は合成後に主にNi3+として存在しており、それがTa5+サイトに入り、その電荷補償のために窒素アニオン欠陥が生じたためと考えている。これらドーピング試料を粉末光触媒としての評価も行ったところ、銀イオンを電子受容体とする酸素生成およびメタノールを電子供与体する水素生成において、未ドープの試料よりどちらも活性が高かった。このように、高温水素還元処理を必要としない各種金属イオンドーピングは、酸窒化物半導体のキャリア密度を制御し、高性能な光電極および粉末光触媒を調製する上で有用な手法であると言える。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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光アライアンス
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Angew. Chem. Int. Ed.
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10.1002/anie.201408483
http://www.ehcc.kyoto-u.ac.jp/eh41/home/abe/