研究課題
近年精力的に行われている熱電変換材料研究において、実用化を指向した材料開発を行うことが早急に求められる。これまでに行われた物質探索から見出された特異的な熱電特性を示すフラーレンについて、計算化学的手法を用いた原因解明と次世代材料設計へのフィードバックが本研究の主目的である。平成26年度は、前年度に実験で得られたゼーベック効果の温度依存性から、構造的な変化が期待されたため、SPring-8でのGIXD測定を行ったが、当該する温度領域において明確な構造変化は観測できなかった。そこで前年度に導入したGPGPU搭載Linuxマシンを用いて分子動力学計算パッケージGromacsによる計算を行い、分子シミュレーションによって分子運動の温度変化を考察した。結晶構造を基に作成した単結晶構造と、分子をランダムに包含した微結晶構造をそれぞれモデリングし、双方の挙動を比較した。得られた安定化構造に対して密度、定圧比熱、運動エネルギー、回転運動の自己相関関数などの物性値を概算した。各種解析により、微結晶構造では多くの空隙が生じていることがわかったが、より高密度の単結晶構造において回転運動の自己相関関数の素早い減衰が観測された。減衰の時定数をフィッティングにより求めたところ、微結晶構造では結晶ドメイン間に起因すると予測される大きな時定数が確認できた。これは空隙に対して分子が頻繁に重心移動していることを示しており、分子同士の衝突によって回転運動が散乱していることが示唆された。さらにグリーン・久保公式を基にした熱伝導率の算出を試み、結晶構造と熱伝導率との関連性を示す傾向が散見された。これにより、当初期待されたフラーレンの回転運動だけでなく、並進運動が熱物性に寄与している可能性が示された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち謝辞記載あり 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (9件)
信学技報
巻: 114 ページ: 51-56
Appl. Phys. Express
巻: 7 ページ: 065102
10.7567/APEX.7.065102