本研究では、芳香族分子の基礎原理であるヒュッケル則に従う[4n]π電子系“反芳香族”分子システムの包括的な電子構造とその酸化還元特性の理解を目指して、様々なπ共役拡張ポルフィリン誘導体を基本骨格とする反芳香族環状化合物を合成し、構造同定及び分光特性の解明を目指している。平成25年度は、既報の24π反芳香族分子”ロザリン”以外にピロールの連結体(ビピロール、ターピロール)を骨格に有する [24]アメチリンおよび[26]ルビリンの合成を行い、得られたメソ位の置換基の数が2つ(アメチリン)、3つ(ロザリン)、4つ(ルビリン)と異なる24π反芳香族拡張ポルフィリン誘導体の系統的な構造ー物性相関について検討した。 構造同定(核磁気共鳴(NMR)、X線結晶構造解析など)ならびに光物性(吸収、発光、磁気円二色性(MCD)スペクトル)、フェムト秒時間分解分光特性(過渡吸収スペクトル、二光子吸収スペクトル)、電気化学特性(サイクリックボルタンメトリー(CV))などの総合的な物性評価を行い、反芳香族分子の分子骨格およびπ共役システムの特異性を明らかにすることが出来た。特にロザリン分子において、プロトン化および脱プロトン化を介した特異な酸化還元反応挙動が明らかとなった。また測定結果は、理論計算(DFT法)によって、対応する化学種の電子構造と分子軌道に対応づけし、その芳香族性の度合いについては、NICS値、HOMA値ならびにAICDプロットによって、理論的に定量化した。
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