研究課題
本研究ではアンバイポーラ能を有する新規機能性有機色素材料の探索を目的とし、材料の分子設計、開発、並びにその物性研究を目的として行った。研究では、研究者がこれまでに研究を続けてきた、高い正孔輸送能を有する「アセン」骨格に、電子輸送能を有する骨格を組み込むことで新規なアンバイポーラ材料を開発する計画であり、この際、研究の促進を期待して分子計算によるアプローチを行った。理論計算では、材料のエネルギー準位、スペクトルの吸収位置、そして、電荷輸送の際に最も重要なファクターである、分子構造の「再配列エネルギー」を調べることができる。この計算アプローチは本研究を行う九州大学のスーパーコンピュータシステムを利用した。アプローチの結果、数種の骨格導入が、アンバイポーラ能の発現に有用であることが期待された。例えばアセン骨格の両末端にフラン環を導入した「ジフラノアセン」誘導体では、環縮合数の増加に伴い、正孔・電子輸送の際の再配列エネルギーが減少し、アンバイポーラ能を発現する事が期待された。この結果を元に、実際に材料を合成し、環縮合数が6つであるジフラノテトラセンおよび7つであるジフラノペンタセンの誘導体を新規に合成した。これら化合物群は、結晶・溶液中で、暗室下において非常に安定であり、材料として有用であることが期待された。さらに、環縮小に伴い吸収スペクトルは長波長側へシフトし、エネルギーギャップが狭まることが示唆された。これは実際にサイクリックボルタンメトリーにより確認でき、アンバイポーラ能を持つ可能性が高いことが実験的にも期待された。今後は、これら材料を用いたデバイス展開を行っていく予定である。さらに、他の新規な骨格を含んだアセン類の合成検討も進行しており、これらに関しても同様の測定とデバイス展開を行っていく。これら結果は1報の論文と3件の学会発表を行い、研究成果の発表を行った。
翌年度、交付申請を辞退するため、記入しない。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Tetrahedron Letters
巻: 55 ページ: 1424-1427
10.1016/j.tellet.2014.01.036