初年度に実施した非結像光学の手法を用いたルーバーによる採光装置の研究開発は、太陽の日周運動による高度の変化に対応し、成果を上げたものの、太陽の方位への対応には課題がある結果となった。この事を踏まえて、太陽方位による影響の極力少ない固定式採光手法について検討を行った。その結果、地表と太陽軌道の関係を考察する事で、初年度の採光断面の計画手法にて設計した、採光部と放光部の組合せからなる2次元的な採光装置形状を、地軸に平行な軸を中心とした回転体として、地軸と平行に設置する事で、理論上は太陽方位に全く左右されずに、常時地軸に沿った方向の限定された範囲を照射する採光装置の計画が可能である、という発想を得た。 この採光装置に用いる2次元の採光装置形状は、春秋分の太陽高度を標準として、夏至、冬至それぞれ+/-23°の範囲から採光可能な非結像光学による断面を用いれば足りるため、比較的に設計し易い装置と出来る特徴がある。この採光装置の3Dシミュレーションモデルを作成し、採光部と放光部の組合せの検討を実施し、夏至、冬至の採光、放光性能を併せて確認しながら、基本形となる採光装置形状を決定した。3Dプリンターで同形状を造形し、金属蒸着を施した実験模型を製作した。この模型を用いた縮尺実験を行い、太陽方位に対する対応についても確認を行った。回転体とした場合には採光量を確保しにくい事が予測されたため、これに対する机上検討を同時に行ったが、これについては本研究の中で結論は得ていない。以上の成果をまとめると以下の通りである。 1)太陽方位、高度に影響されない固定型採光装置の計画方法を発見した。2)同計画方法に従って、実際に採光装置の一例を計画し、解析によって効果を確認した。3)模型を作製し、実際に屋外で実験する事で、その効果を確認した。
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