研究課題/領域番号 |
25889012
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
工藤 良太 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (70706697)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 超解像光学 / 変調照明 / アルゴリズム / 暗視野散乱光検出 / 欠陥計測 |
研究概要 |
ナノメートルスケールの微細構造を持つ半導体などの製品の製造現場において,歩留まり改善のための欠陥計測技術は重要な役割を担う.研究の最終目的は,微細加工表面構造を,高速,非破壊,高解像度で観察することを可能とする技術を開発することである.提案手法は変調照明シフトによる超解像光学式計測と呼ばれるものである.従来は,変調照明として二光束干渉による定在波照明を用いて開発が進められていた.従来法における問題点を解決しうる手法として,三光束干渉による定在波を利用する手法を提案している.産業的応用のためには二次元領域においての超解像が必要となるが,第一段階として,一次元領域においての超解像検証が必要となる.提案手法による一次元領域の超解像について理論的解析を行った結果,50nmスケールまでの構造の解像可能性があることが確認された.しかし,連続体サンプルにおいては真の構造と解像結果の相関が悪いため,更なる解析が必要である.ただ,提案手法は暗視野散乱光検出により離散的構造を観察することを目的としているため,この問題は深刻なものではない.次に,実験的に実現可能性を検証したところレイリー限界541nmの条件化で230nm程度の構造の超解像に成功した.二次元超解像の実現のためには,サンプルと変調照明分布との相対的な位置関係を回転させる必要がある.相対的位置関係が90度変化したような位置において,変調照明を施し,取得画像を得るという方針により,二次元超解像シミュレータを構築した.シミュレータにより二次元の超解像性が実現できることを確認したものの,真のサンプル構造とは若干異なる結果が得られている.この問題の解決のためには,提案超解像処理の連続体に対する特性の理解を深める必要がある.また,別の方策として,一次元の超解像結果を組み合わせることで,真のサンプル構造と近い超解像処理結果を得るという手法を検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度,当初の計画には無かった異動があり,以前所属していた東京大学の設備の利用が困難になったため,研究計画に大幅な変更が必要となった.シミュレーションベースの検討においては,想定していたFDTDソフトを用いることができないため,新たに安価,もしくは無料のFDTDソフトを選定している途中である.サンプルからの散乱形態の物理的なシミュレーションについては進捗が滞っているが,超解像処理自体は大きく進展した.一次元解析によって提案手法特性の理解が進み,二次元超解像処理においては二次元超解像性の成果と連続体解像に関する課題が明らかになった.明らかになった.二次元超解像の特性を利用して新たな処理方法によるサンプル再構成の洞察を得た.現在の所属地,大阪大学において,基礎的な実験的検討を行う予定であるが,必要な機器がないことと予算の都合上,昨年度中には必要な実験機器をそろえることができなかった.本年度は実験機器を取り揃え,基礎実験を行う予定である.
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今後の研究の推進方策 |
照明方向とサンプルの相対的角度変化における散乱光量の変化を知ることにより,二次元超解像の精度を上げる計画である.この計画について市販の高精度FDTDソフトによるシミュレーションは,ソフトが高額のものが多いため,安価なものを利用しなければならない.しかしながら安価なFDTDソフトは機能が十分でないものが多く,現状本格的利用には至っていない.シミュレーションについては今後,ソフトの探索を進めていくが,上述の散乱光量の変化については,実験において検討可能である.実験はシミュレーションと比べ,自由度が制限されるものの,本物の物理現象を確認することができる.この実験のための基礎実験装置の構築を行う.またこの実験に必要な対象サンプルは入手済みである.二次元超解像処理においては予備的なシミュレーションにより,連続的な構造を離散的な構造に変換してしまうケースがあることを確認した.これには一次元では確認できず,二次元超解像シミュレーションを行って初めて得られた知見も含まれている.今後処理条件の探索により,この問題に対処する可能性を探っていく.一方で,一次元超解像処理の二次元平面に対しての実行を,超解像処理方向を変化させながらN回行い,得られたN枚の画像を適切に融合させることによる二次元超解像処理により,上記の問題をクリアできる可能性がある.この手法についても今後,サンプル構造や,変調照明シフト方向などのパラメータを変化させながら,実現可能性を検討していく.
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