ナノメートルスケールの微細構造を持つ半導体などの製品の製造現場において,歩留まり改善のための欠陥計測技術は重要な役割を担う.研究の最終目的は,微細加工表面構造を高速,非破壊,高解像度で観察することを可能とする技術を開発することである.提案手法は変調照明シフトによる超解像光学式計測と呼ばれるものである.従来は,変調照明として二光束干渉による定在波照明を用いて開発が進められていた.従来法における問題点を解決しうる手法として,三光束干渉による定在波を利用する手法を提案し,一次元領域において理論的,実験的に実現可能性を検証し,特性を検討した.産業的応用のために,超解像の二次元化を目指す.そのためには,サンプルと変調照明分布との相対的な位置関係を回転させる必要がある.位置関係回転によって,取得散乱光量が大きく変化することを考慮した,二次元超解像の実現を目指した.まずサンプルと照明方向との間の相対的角度変化による,取得散乱光量の変化を考慮しない状態での二次元超解像シミュレーションにより,二次元超解像の特性を確認した.実際の半導体微細加工表面構造を想定したサンプル,具体的には格子状に散乱光率分布を持つサンプルに対して二次元超解像処理を行った.その結果,超解像特性こそ得られたものの,格子状サンプルの格子点のみが解像され,格子のライン構造情報が失われることを確認した.この問題に対処するため,擬似的な二次元超解像処理を構築した.変調照明の書くシフト方向における超解像処理を単独で行い,得られた一次元的に超解像が実現した各画像を画像処理的に融合する手法である.この手法は上記取得散乱光量の変化をも考慮した手法である.この手法による上記サンプルの解像シミュレーションにより,サンプル構造の再構成に成功した.また,上記サンプルと類似構造に欠陥を導入したとき,欠陥の検出可能性が高まることを確認した.
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