本研究の目的は、社会基盤構造物の安全監視を実現するために、疲労損傷を記憶する新しい無線センサタグを提案することである。基本的なセンサ原理としては、疲労損傷の累積に伴い電子タグのメモリ部分が順々に破壊されることにより、記録データが変化し、それをRFIDの技術で読み出すことで疲労損傷度を計測するものである。これまでに様々な疲労監視技術が提案されているが、新規の計測システムへの置換には莫大な予算が必要となるため、適用できる範囲が限られる。そこで本研究では、最近の無線タグ技術を応用することで、実際の現場で簡便に使用でき、非常に経済的な疲労センシング技術の構築を目指す。H26年度は、多数の無線センサタグから構成されるワイヤレスセンサネットワークの構築を行った。ZigBee等の低消費電力の無線通信規格を用いて、アクティブ型電子タグを作製し、長期間の連続使用可能なセンサネットワークの構築を試みた。さらに3G等の広域無線通信手法を用いて、作成したセンサネットワークをインターネットに接続した。これにより、遠隔地モニタリングを可能とする監視システムの構築行った。上記のワイヤレスセンサネットワークを実際に供用中の橋梁等へ適用し、実用化への指針を立てた。また腐食環境下など多様な条件における寿命予測にも対応できるように、ACM型腐食センサや別の原理に基づく疲労センサなど、他のセンシング手法と組み合わせて使用することを試みた。
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