研究課題/領域番号 |
25889018
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
守 裕也 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80706383)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 乱流の再層流化制御 / 流体工学 / 流れの数値シミュレーション |
研究概要 |
我々が直面する地球温暖化問題等の種々の問題に対し,例えば輸送機器におけるエネルギー損失を抑えることで解決への寄与になると期待されている.乱流摩擦抵抗の低減制御技術は,輸送コストの削減及び省エネルギー化に多大なる貢献できると期待されている.本研究では,平行平板間流において壁面乱流の層流化を達成できる壁面からの進行波状制御に関して取り扱う.この進行波状制御による再層流化現象のメカニズムは未解明であり,本研究ではこれを数値的及び実験的に明らかにする.本年度の研究業績は以下の通りである. 1.数値計算による再層流化範囲の調査 本研究で取り扱う進行波状制御は,振幅,位相速度,波長の三つの制御パラメータを有する.これらを系統的に変化させるパラメトリックスタディを行うことで,再層流化が生じるパラメータの範囲を明らかにした.また,レイノルズ数も110と300に関して行い,レイノルズ数依存性も調査した. 2.実験による抵抗低減効果の確認 作動流体を空気とした平行平板間の下壁にゴムシートを設置し,振動発生器によりゴムシート上を進行波を作成し,差圧実験及び粒子画像測定法より流れの様子並びに抵抗低減効果を確認した.ゴムシートの取り扱いを工夫することで下壁との干渉を抑え,単一波に近い進行波を作成することが可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.平行平板間流れの直接数値シミュレーション 現在までに,平行平板間流れの直接数値シミュレーションを用いることで,壁面乱流の再層流化が生じるパラメータの範囲を明らかにした.またレイノルズ数依存性の調査も行い,この制御が制御手法として有効であることが分かった. 2.室内風洞実験 実験装置の下壁面に設置したゴムシートの取り扱いを工夫することで,高周波成分が乗らない進行波を作成することが可能になった.実験結果よりこの制御によって摩擦抵抗低減効果が確かめられた.効果が発現した理由として,作成した進行波が数値計算により明らかにされた制御効果が得られる範囲のパラメータを有するためであることが挙げられた. 以上のことから,数値計算では有効なパラメータの範囲を明らかになり,実験によりそのパラメータの範囲で制御を実現できた.これらは本研究における最終的な目的である「制御効果のメカニズムの解明」及び「空間発達の影響の調査」に役立つものであり,現在までで研究の達成度は「おおむね順調」であると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究成果により乱流がこの進行波状制御により再層流化する場合の制御パラメータの範囲が明らかになった.本年度はこれを踏まえ,なぜこのパラメータが有効であったかの調査を行う.摩擦抵抗低減効果に大きな影響を及ぼす制御効果の空間的な発達に関しても,実験的手法により詳しく調べる. 1.平行平板間流れの直接数値シミュレーション 昨年度,乱流が再層流化する場合の制御パラメータの範囲を明らかにした.それを踏まえ本年度はその制御パラメータがなぜ有効であったか流れ場の詳細に観察により調査する.これまで上下壁での進行波の位相関係が逆位相のものに制御を制限していたが,制御効果が位相関係によらないのであれば実用化上大きな利点となるため,これについてもパラメータとして変化させることで,上下の位相関係が制御効果に与える影響の調査も行う.さらに現在低レイノルズ数に限って調査を行っているが,高いレイノルズ数における制御効果についても検討する. 2.室内風洞実験 引き続き制御効果の実験的な調査を行う.特に本年度は,粒子画像測定法により得られた速度場を入念に解析し,波状壁面とそれによって生じる流れ場の関係を調査し,さらに直接数値シミュレーションの結果と比較したうえで摩擦抵抗低減メカニズムの解明に役立てる.また調査する領域を主流方向に変えることで空間発達の効果も明らかにする.
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