研究課題/領域番号 |
25889024
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
清水 荘雄 東京工業大学, 元素戦略研究センター, 特任助教 (60707587)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 強誘電体 / 強弾性体 / 薄膜 / エピタキシャル成長 |
研究概要 |
初年度に該当する平成25年度は、原子層堆積法によるエピタキシャル薄膜作製の予備的な実験として(1)有機金属化学気相堆積法を用いた多結晶薄膜における強誘電性の発現の確認および(2)物理気相堆積法を用いたエピタキシャル薄膜成長を行った。以下に詳細を述べる。 (1)既往のZrO2基強誘電体の研究は、主としてTiN/SiO2/Si基板に堆積した多結晶薄膜を用いた研究の報告がなされており、他の下部電極においても強誘電性が発現するかは不明であった。そこで、有機金属化学気相堆積法を用いた多結晶薄膜作製では、Zr1-xHfxO2薄膜の多結晶薄膜作製をPt/Ti/SiO2/SiおよびIr/SiO2/Si基板上に成膜を行い、強誘電性の確認を行った。その結果どちらの基板上でも強誘電性の発現が確認され多様な下部電極の使用が可能であることが明らかとなった。特にPt/Ti/SiO2/Si基板上における薄膜においては、これまでに試みられてこなかった酸素中の熱処理によって結晶化した薄膜においても強誘電性を発現することが確認され、この物質が高い耐酸化性を持つことを明らかにした。 (2)ZrO2基強誘電体における強誘電性の起源としては、準安定相である斜方晶相の常圧・常温における安定化によると考えられているが、アモルファス相の熱処理結晶化による手法であるため、エピタキシャル成長のような直接的な結晶化過程で斜方晶相が生成するかは、不明であった。本研究では組成の制御が容易である物理気相堆積法を用いたエピタキシャル成長を行った結果、斜方晶相が直接成長させることのできる組成および条件を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ZrO2基薄膜の強誘電性の発現は未だ、萌芽的な段階にあるため研究例が少ない。そのため強誘電性の発現の確認、およびエピタキシャル薄膜の作製は最大の懸案事項であったが、この二つの達成できたことは本研究の目的であるZrO2基強誘電体薄膜の巨大圧電性に向けて大きく前進できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ペロブスカイト型酸化物強誘電体における高い圧電応答特性は、分域構造などの微視的構造が主要な役割を果していると考えられており、ZrO2基強誘電体においても微視的構造の解明が巨大圧電性の発現の鍵となるといえる。 そこで、2年目にあたる平成26年度は、1年目に得られたエピタキシャル薄膜や多結晶薄膜を用いて(1)圧電応答顕微鏡を用いたドメイン構造の観察や、(2)高分解能X線回折測定(3)ラマン散乱を用いた振動分光測定を行う。これらの測定は、通常の測定のみならず、電界下におけるin-situでの測定も予定している。また、巨大圧電性を示すための組成の最適化なども電気特性・構造評価と並行して行う予定である。
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