研究課題/領域番号 |
25889025
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
安井 伸太郎 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教 (40616687)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 相転移 / 強誘電体 / 圧電体 / ドメイン / コンビナトリアル / 薄膜 |
研究概要 |
本研究はモルフォトロピック相境界(MPB)付近における巨大圧電性の起源を調査することを目的とした。電界を印加した際に変化すると考えられる結晶構造およびドメイン構造について、時間分解放射光X 線回折を用いて測定した。また電界を印加した後に起こる、構造変化の緩和時間についても調査を行った。サンプルにはPLD 法で作製した強誘電体薄膜、および反強誘電体薄膜を用いた。また高効率に実験を遂行するために、一枚の基板内に組成傾斜を有するコンビナトリアルライブラリー薄膜を同時に用いた。実験に用いたサンプルの組成は(Bi,Sm)FeO3であり、コンビナトリアルPLD法によりBi/Sm組成比率を変化させた膜を作製した。Sm含有量が14%付近において圧電値は最大を示すことが圧電応答顕微鏡PFMの結果より示された。時間分解放射光XRDの結果より、Sm含有量が5%程度までは菱面体晶を保持しながら格子の歪みのみを示した。5%から14%までは電界OFF時における菱面体晶では見られなかった新しい相に相転移する現象が見られた。この電界誘起相転移で得られた新しい相の緩和時間は1マイクロ秒よりも遅いことが同時に分かった。Sm含有量15%において、反強誘電相(Pbnm)/常誘電荘(Pnma)と考えられる相が電界印加によって強誘電体相(5%-14%で見られた)に変化した。また、電界をOFFにした際にはすぐに緩和現象が見られた。従ってこの相のスイッチバックは約10ピコ秒である事が分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までの実験結果より、結晶相境界付近において電界誘起相転移を起こすことが実験的に分かった。その電界誘起相転移は大きく分類したら二種類あり、結晶相境界を基準にBi-rich相では強誘電体から強誘電体相に変化し、Sm-rich相では反強誘電体から強誘電体に相転移する。また、時間分解測定を行っていることから、それらのドメインダイナミクスを理解することが出来た。当初の計画予定通り研究を遂行することが出来ている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究によって、電界誘起相転移に関する実験データを得ることが出来た。本年度は、これらの電界誘起相転移の体積分率を測定する。結晶相の同定は行っているので、この結果を基に相体積分率を求める。詳しく記すと、超格子ピークである1/2や1/4のピークに着目し、これらのピーク強度の変化より体積変化率に変換する。実験はSPring-8によって、昨年度同様の手法を用いて行う。さらに、これらの得られた実験データを基に、第一原理計算より電界印加相転移におけるエネルギー状態を計算し、理論的な点からも考察する予定である。
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