研究実績の概要 |
量子光学における電磁誘起透明化(Electromagnetically induced transparency, EIT)を模擬するメタマテリアルを用いて, 電磁波の極低群速度伝搬およびそれに伴う局所電場増強効果を利用した非線形現象の高効率発生に取り組んだ. まず, 前年度に設計したメタマテリアルをレーザー加工により作製し, 透過特性の測定を行った. 真空中の光速の1/22000という低群速度が得られたが, 同時に, 加工断面の粗さが損失として影響することが判明した. 加工断面の粗さを低減するために, ワイヤー放電加工により再度メタマテリアルの作製を行った. その結果, 真空中の光速の1/27000という低群速度が達成できた. また, このとき, 局所電場増強率が300程度になることが, 実験とシミュレーションの比較により明らかになった. 次に, メタマテリアルを低圧空気中に配置し, 透過特性の測定を行ったところ, メタマテリアル中の一部で空気の絶縁破壊が生じ, メタマテリアルの応答が相転移的に変化することがわかった. さらに, 電磁波の周波数やパワーを変化させて, メタマテリアル中での放電状態を制御することにより, メタマテリアルを3種の異なる状態に動的に変化させられることが明らかになった. これらの結果は, 作製したメタマテリアルは, 電磁波に対するリミッタやスイッチング素子として応用できることを表している. また, 研究の過程で, EITメタマテリアルと同様の結合共振メタマテリアルについて詳しく解析したところ, 半透過, 半反射の1/4波長板が実現できることも明らかになった. これは円偏光ビームスプリッターとしての応用可能性をもったものである. 本研究における成果は, 例えば, 光情報処理のために必要な素子の実現に貢献すると考える.
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