研究課題/領域番号 |
25889029
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
小谷野 智広 金沢大学, 機械工学系, 助教 (20707591)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 電解加工 / ワイヤ電解加工 / 微細加工 / 短パルス / シミュレーション |
研究概要 |
電解加工は電解反応を利用した化学的加工法であり,その加工原理ゆえに工具電極が消耗せず,加工変質層が生じない.また,非接触加工であるため加工反力が小さいという特徴も持つ.本研究では,工具電極として極細線ワイヤ電極を用い,これまでに実現できていなかった高精度かつ放電加工に匹敵する高能率な微細ワイヤ電解加工を実現することを目的としている.平成25年度は直径数十μmのワイヤ電極を使用可能なワイヤ電解加工機を製作し,直流電源を用いて加工実験を行った.加工特性の調査として,電源電圧による影響とワイヤ電極の送り速度による影響を調査した結果,印可電圧が小さく送り速度が大きい条件ほど,小さな極間距離が得られた.また,工作物の板厚を変化させて加工を行った結果,板厚が大きくなるほど極間距離が小さくなるという結果が得られた.よって,工作物の板厚が変化するような加工において均一な極間距離を得るためには,板厚に応じて印可電圧や送り速度などを適切に変化させる必要があることがわかった.一方で,本実験で用いた直流電源では,加工中に発生する気泡や電解生成物が加工を阻害しやすく,極間距離が小さい条件では加工が安定して進まなかった.そこで,印可する電圧を短パルス化し,パルスの休止時間中に生成物の排出の促進させることで,この改善を図った.その結果,短パルス電源を用いることで極間距離が小さな条件でも安定して加工を行うことができ,直流電源よりも溝幅の小さな加工を行うことができた.また,直流電源では加工した溝のエッジ部が大きくだれてしまったのに対して,パルス電源ではシャープなエッジを得ることができ,形状精度が良好であった.さらに,加工電源の回路配線のインダクタンスや極間の電解液などをモデル化した等価回路解析を行い,これらのインダクタンスや電解液の抵抗が加工量に与える影響を明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度に予定していた加工装置の開発と基礎的な加工実験は順調に進んだ.平成25年度に行った加工実験の初期においては,市販のワイヤ放電加工機を流用してワイヤ電解加工用の装置を製作し,基礎実験を行った.しかし,今後の実験での利便性を考え,ワイヤ電解加工機を新たに一から製作した.これにより,平成26年度に予定している送り速度や印可電圧などを加工状態に応じて変化させる適応制御の実験において,制御の実施が容易になると思われる.また,短パルス電源の製作とそれによる加工実験も順調に進み,パルス電源を用いることで直流電源よりも極間距離の小さな加工が行えた.さらに,平成25年度に予定していた加工電源の等価回路解析も順調に進んだ.ただし,3次元的な加工形状シミュレーションの実施には課題が残っている.
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に製作したワイヤ電解加工機と短パルス電源を用い,直径数十μmのワイヤ電極を用いたワイヤ電解加工の基礎的な加工実験を,昨年に引き続き行う.また,平成26年度はワイヤ電極の保持部などを直径数μmの極細線ワイヤ電極に対応したものに改良し,加工実験を行う.さらに,加工電源の等価回路解析を発展させ,ワイヤ電極と工作物,極間を3次元的な形状モデルで表現し,加工の進展に伴う工作物の除去を計算することで,ワイヤ電解加工のシミュレーションを行う.これらの実験結果とシミュレーションの結果を参考に,工作物の板厚や加工パスに応じて最適な電源電圧の条件や送り速度を用いる適応制御を行い,高能率かつ高精度な加工を実現する.
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