層流から乱流への遷移域においては、「乱流パフ」や「乱流斑点」と呼ばれる空間的に乱れが局在した構造がしばしば見られる。本研究ではそれらの空間局在構造を特徴づけるナビエ・ストークス方程式の不安定解を求め、その特性を明らかにすることによって、乱流遷移域における極めて複雑な動力学をより単純な不安定解を用いて記述することを目的としている。 平成26年度は、まず正方形ダクト内の流れに対して、レイノルズ数を固定した上で、流れ方向の計算領域の大きさを変化させ、三種類の異なるedge stateを得た。短い計算領域の場合、流れは周期境界条件の影響を強く受け、edge stateは計算領域全体に広がった定常進行波解となった。計算領域を中程度に拡張すると、edge stateはカオス的な振舞いを示し、時折乱れが局在する様子が観察された。さらに流れ方向計算領域を広げることで、前年度に得られたものと同様の、乱れが局在した定常進行波解がedge stateとして得られた。ここで得られた局在解は層流状態に極めて近い特性を示し、乱流遷移の引き金となりうるという意味で、大変重要な解である。 続いて、ダクト断面のアスペクト比をパラメータとするホモトピー法を実施した。アスペクト比を1.6程度にまで拡大したところ、スパン方向にも乱れが局在した状態を得た。これは正方形ダクト内流れにおける乱流パフと平面ポアズイユ流れにおける乱流斑点との関わりを示唆する結果である。
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