本研究は、災害への対応において不可避とされる住民の再定住(何らかの外的な要因によって住み慣れた場所を離れ、新たな場所で生活を再構築すること)に関わる問題に着目したものであり、再定住という現象の理解を通じて、レジリエンス(あるシステムが不確実な変化にも対応し継続・回復する能力)を有する地域コミュニティのあり方とその実現に向けた支援方策を探ることを目指すものである。そのために本研究では、(A)スリランカにおける2004年インド津波被災者再定住地の継続状況とその要因の把握、および(B)東日本大震災に伴う津波・原発事故による長期避難者への居住支援状況の把握を行い、社会背景と状況の異なる再定住の実態を把握し、それらを踏まえて、(C)再定住地における居住継続の条件とその支援方策の検討を行うことを課題とした。 本年度は、上記の課題(A)に関しては、2008年から2010年にかけて現地調査を行ったスリランカ南部・ウェリガマ郡の再定住地・計14箇所を再び訪れ、津波被災から10年近くが経過した現時点における再定住地の実態を把握した。課題(B)に関しては、福島第一原発事故に伴い京都市に長期避難している世帯を対象としてアンケート調査や支援グループの代表者に対するヒアリングを行い、現在の住まいの状況とそこに至る経緯を把握するとともに、住まいの選択の基盤になると思われる住情報の支援ニーズについて把握した。課題(C)に関しては、レジリエンス概念に関する他分野(生態学、心理学、防災・減災学)の文献レビューを行い、また災害に対するレジリエンスをテーマとした国際学会(Environmental Design Research Association/米国・プロビデンス 2013年5月29日~6月1日)のワークショップで発表し、意見交換を行った。
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