モダニズム建築を文化財として使い続けるには、機能更新のための増築や改築といったインターベンション[介入] が必要で、その際にどのようにオーセンティシティ[真正な価値]を継承していくかが課題となる。当該年度では、国際会議と国内外の事例調査により、国内外のモダンムーブメントの保存再生に関わる技術的な側面を中心に、インターベンション(介入)とオーセンティシティ及びインティグリティの関係を確認し、前年度の調査結果と合わせて国内外のモダンムーブメント建築の再生手法の違いについて考察した。事例については比較検討のため一部近代建築まで含めることとした。 1)国内の再生事例:国際文化会館 日土小学校 新風館 日比谷図書館 東京駅 他 2)海外の再生事例:ラ・ロシュ=ジャンヌレ邸 トゥーゲンハット邸 ペサックの住宅 ヴィープリの図書館 マルセイユのユニテ・ダビタシオン ラ・トゥーレットの修道院 イエール大学アートギャラリー 他 保存再生のベースとなるオーセンティシティの継承は、多様な事例の各部位について実施されていることが確認される。その中で外装建具の再生手法等は、外観のオーセンティシティに大きな影響を与えている。再生手法の課題としては、基本方針(期間 位置づけ)・活用用途(リビングヘリテージの用途)・法制度・技術的課題(建具 断熱 色調等)等があげられる。建築の価値とその再生の目的を把握し、保存再生のルールをどのように位置づけるかにより、インティグリティの継承は大きく異なる。装飾等の継承のないモダンムーブメントの保存再生において、様々な問題の解決だけでなく、この基本ルールの確認と、何を継承するかという方針が重要となる。
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