多値変調信号に対応可能なPSAを実現するために、H25年度に提案したマルチQPM構造を有するPPLNを用いて4値位相変調(QPSK)信号から搬送波位相に同期した信号を抽出する方法について、さらなる検討を進めた。マルチQPM素子のピーク数は2つに減らすことで信号の4逓倍による搬送波の抽出だけでなく、非縮退パラメトリック増幅の利用に必要な位相共役光の発生効率が従来よりも10dB以上向上することを明らかにした。さらに今季はPSAを安定に動作させるための位相同期ループ(PLL)について詳細な検討を行った。PLLの回路構成とフィードバック利得の見直しを行った結果、位相変調の振幅を従来よりも1ケタ以上小さくしても適切なフィードバック利得を設定することにより安定した位相同期が得られることを実証し、またPLLにともなう位相変調による信号品質の劣化を抑えられることを実証した。さらに偏波多重信号に対応するPSAの構成についても検討を行った。2つのPPLN導波路を偏波を直交させてタンデムに接続し、それぞれ直交する2つの偏波用のPPLNでパラメトリック増幅を行い、2つのPLLを独立して両偏波の信号・励起光の位相同期にそれぞれ用いることにより、偏波多重された信号の位相感応増幅を達成した。PSAの分散耐性に関しては実験の簡単のため2値の位相変調信号に対する分散耐力の検討を行った。群速度分散により波長に対して平坦ではない位相変化を受けた信号をPSAで増幅した場合、PSAの位相感応特性により、波長ごとに受ける利得が異なる。ランダムなベースバンド信号で変調された信号はビットレート程度の周波数広がりを持った側波帯を有しているが、この側波帯の主要部分におる位相変化がπ/2以下であればPSAの効果により位相変化を修正して中継増幅が可能であることが分った。
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