氷に代替する蓄熱媒体として,大きい潜熱を維持したまま作動温度に合わせて融点を制御できる物質が求められている.そこで,数10K程度のオーダーで融点を調整できる物質として期待されているナノメートルサイズの細孔を持つ多孔質体(ナノ多孔質体)に分子を閉じ込めた系に注目した.本研究では,ナノ多孔質体の細孔サイズが融点や結晶化に必要な過冷却度に与える影響を理論および数値実験から研究し,ナノ多孔質体内で融点が変化するメカニズム解明に向けて研究に取り組んだ. まず,結晶化に必要な自由エネルギー障壁を数値実験により定量的に測定し,細孔サイズが結晶化に必要な過冷却度に与える影響を研究した.その結果,特定の細孔サイズでは融点が高いだけでなく,自由エネルギー障壁も低く,小さな過冷却度での結晶化が予想されることを明らかにした.本研究成果を学術雑誌 The Journal of Chemical Physics および国際会議 9th Liquid Matter Conference にて発表した. つぎに,細孔サイズが融点に与える影響を理論的に研究した.過去の数値計算の結果として得られた融点と Gibbs-Thomson の式から予測される融点を比較した.その結果,数値計算で得られたナノ多孔質体に閉じ込められた分子の複雑な融点変化を部分的には熱力学的に説明することができた.本研究成果を国内学会熱工学カンファレンス2014にて発表し,投稿論文として成果をまとめている最中である.
|