当初計画していたフラッシュメモリシステムの符号化法を検討するに当たり,誤り訂正符号の符号化の高速化が課題であることがわかった.そのため当初の予定を変更し,平成26年度は誤り訂正符号のひとつである低密度パリティ検査(LDPC)符号の符号化の高速化法に関する研究を行った. LDPC符号は高性能な誤り訂正符号のひとつであり,誤りを訂正する処理である復号を低計算量かつ並列に実行することができる.一方でメッセージに冗長性を付加する処理である符号化の計算量が大きく並列化ができていなかったため,符号化の処理時間の短縮が求められている.本研究では,LDPC符号の符号化を並列化することによって符号化の処理時間の短縮を図った.具体的には,LDPC符号の符号化で行われる処理を互いに依存しない複数の処理に分けるアルゴリズムを提案し,その分割した処理を並列実行することで高速な符号化を実現した.本方式の提案に当たり,従来誤り訂正符号との関連が十分に検討されていなかったハイパーグラフを利用している.本方式によって,既存方式よりも符号化にかかる時間を1/2から1/5程度にまで削減することに成功した.加えて,提案方式は既存方式と比べ回路規模を大きくすることなく,並列化を実現している. 本手法は,これまで問題になっていたフラッシュメモリシステムへの書き込み時間を短縮に寄与するだけでなく,通信システムのスループット向上にも貢献が見込まれる.また本研究によって,符号とハイパーグラフの関係が明らかになった.
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