研究課題/領域番号 |
25889066
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
茂野 交市 宇部工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (60707131)
|
研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
|
キーワード | アルミナ / 焼結助剤 / 低温焼結化 / LTCC / 高熱伝導 |
研究概要 |
従来の我々の研究において、少量の添加でアルミナの低温焼結が可能な新しい焼結助剤(CuO-TiO2-Nb2O5-Ag2O系助剤)を開発し、焼成温度900℃以下で緻密かつ高熱伝導率を有する低温焼結アルミナを見出してきた。 今年度はまず、上記低温焼結アルミナとAg電極との同時焼成を行い、LTCC(低温同時焼成セラミックス)積層デバイスとしての応用可能性を見極める取り組みを行った。その結果、上記焼結助剤の組成制御(Ag2O含有量の増量)により、課題であったAg電極の反応消失を抑制することに成功した。これにより、従来と同等の電気特性を有しながら従来にない高熱伝導率を有するLTCC積層デバイスの基礎技術を構築することができた。 次に、上記低温焼結アルミナのさらなる高性能化のため、低温焼結メカニズムの解析にも着手した。焼結助剤とアルミナの混合粉体の溶融温度測定を行い、本系においてアルミナの緻密化が上記混合粉体の溶融温度以下、つまり固相状態でも促進することが示唆された。また、X線回折によりアルミナの格子定数の精密測定を行ったところ、緻密化前と比較して緻密化後の格子定数がわずかながら増加することが判明しつつある。以上より、本研究の低温焼結アルミナ組成(助剤5重量%)では、焼成時に焼結助剤中のTi, Cu等の成分がアルミナに固溶し、アルミナの固相焼結を促進した可能性があると推察された。現在、上記推察の真偽を検証するため、元素分析等によるアルミナ粒内、粒界の解析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、主として3つある。ひとつは、(A)上記低温焼結アルミナと配線材料である銀(Ag)電極との同時焼成を行い、高熱伝導LTCC積層デバイスとしての実現可能性の有無を確かめることである。(B)そして、他の誘電体材料や他分野のセラミックス材料への応用を視野に入れた低温焼結メカニズムの解析を行うことである。(C)さらに、上記低温焼結化技術と粒子配向技術を組み合わせた新たな誘電体材料の探索を行うことである。 すでに(A)に関しては平成25年度で実験が終了している。高熱伝導を有しながら従来LTCC材料と同等の電気特性が得られ、本低温焼結アルミナの高熱伝導LTCC積層デバイスとしての実現可能性を示すことができた。残りの(B)および(C)についても詳細検討を開始しており、新たな知見が得られつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、主として2つある。ひとつは、他の誘電体材料や他分野のセラミックス材料への応用を視野に入れたアルミナの低温焼結メカニズムの解析を行うことである。具体的には以下の3つの検討を予定している。 ・アルミナの低温焼結時の挙動解析(平成25年度の続き) ・焼成雰囲気がアルミナの低温焼結化に及ぼす影響の明確化(平成25年度の続き) ・焼結助剤の添加方法の影響の明確化 もうひとつは、上記低温焼結化技術と粒子配向技術を組み合わせた新たな誘電体材料の探索を行うことである。アルミナや酸化チタンのなかには形状異方性や結晶異方性を有する粒子が開発されている。これらの粒子に上記焼結助剤を添加することで、焼結助剤が配向セラミック誘電体特性に及ぼす影響やメリットを明確化し、良好な特性を持った新たな誘電体材料の探索を行う。
|