研究課題/領域番号 |
25889068
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
徳永 晋介 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 核融合研究開発部門六ヶ所核融合研究所, 任期付職員 (90704990)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 原型炉 / 炉心プラズマ / 密度制御 / 粒子供給 |
研究概要 |
昨年10月の資金交付を受け、本研究で使用する統合コードATLAS専用ワークステーションを整備した結果、原型炉炉心が定常出力に至るまでの計算1ケースに要する時間は約6分と1/3未満に短縮、一晩で100ケースのパラメータサーベイが可能となり、研究効率は大幅に改善した。昨年秋に原型炉概念日本案が更新され、炉心プラズマ計算パラメータに多くの変更があった事などから、当初計画と順序を変更しコアの運転領域探索・密度分布制御研究から着手した。 ATLASは研究進展に伴い課題遂行に対する必要性が明確となった境界輸送障壁形成を模擬する輸送モデル、プラズマ平衡の取り扱い精度向上、エッジ密度計測モジュール、NGSモデルに基づくペレット入射モデル等の機能整備が進んだ。 核融合出力制御と、エッジ密度拘束条件双方に整合的な密度制御ロジック構築を目的とするコア密度分布制御研究は、現状では未解明である粒子ピンチ特性をパラメータとして振りながら進めた。ピーキング率が1.5を超える強力な粒子ピンチがある楽観的ケースを除き、SOLへの燃料ガスパフでは目標核融合出力達成が覚束ない事が早期に判明したため、燃料ガスパフによるエッジSOL密度制御とペレット入射によるコア密度ピーキング制御の二つにより、コアからエッジまでの密度分布を整合的に制御する手法に切り替えた。大規模パラメータサーベイを実施し、エッジ密度拘束条件の元で目標核融合出力達成維持に必要なコア燃料密度を得る制御要件の、粒子リサイクリング率や粒子ピンチ特性に関する依存性の研究を行い、計画通りに2nd IAEA DEMO program workshopにおいて発表した。また、そこから逆算される燃料供給装置性能として、『小半径位置r/a~0.7より内側へのペレットデポジション深さ』をコアからエッジまでの整合的密度分布制御を可能にするために重要条件として提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の項で述べた通り、応募時点で予定に考慮されていなかった、ターゲットである原型炉概念全体像の抜本的更新に伴うパラメータ調整に一ヶ月程費やさざるを得なかった。 また研究の進捗に伴い、ペレットによるコアへの直接燃料供給が必須である事が明確となると、温度分布の境界輸送障壁形成がなければペレットデポジション位置で温度が低下し過ぎて現実的分布との乖離が大きい事がわかり、それに対処すべくペデスタル形成を模擬する輸送モデルを整備すると、次にそれが平衡計算のX点やプラズマ表面のより精密な取り扱いを要請するなど、原型炉制御オペレーションが具体化するにつれて次々と予定に無かったコード開発課題が生じてきた。このような状況はスタートアップ研究と言う課題の性格上ある程度致し方なく、それをコードとして全て解決して来た事もまた前進ではある。半年経過時点でコア密度制御に一区切りが付こうとしている現状は重大な遅れというほどのものではない。しかし昨年度中に投稿する予定であったコア密度分布制御による出力制御研究成果の論文執筆作業を今行っている状況である事から考えれば、目標達成に向けた道のりとしては当初計画から1ヶ月強の遅れが生じていると認識している。 今年度はコアと順序を入れ替えたSOL/ダイバータ領域の密度制御研究に軸足を移す計画となっているが、コアとエッジの密度制御をペレットとパフで分離する自由度が当初計画から増えた事、またプラズマ密度がイオン-電子間のEquipartitionに及ぼす影響や重水素とトリチウムの密度比率変化が、無視できないという密度制御検討をさらに複雑にする要因が生じた。以上の事から、コアからダイバータまでコンシステントなグローバル密度分布制御のありかたを解明しマップとして提示する、という本課題の目標に向けた課題は当初計画よりも複雑化しており、精力的な取り組みによる挽回が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
達成度理由の項で細かく述べた通り、目標達成に向けた道のりは当初計画よりも伸びている。原型炉密度制御に関するコアからダイバータまでのグローバルな動的応答解明・制御手法構築という本研究課題最終目標の学術的意義と核融合研究における重要性には変わりが無い。従ってそこへ向かう方策として研究計画に以下の修正を行う。 当初計画では1.コア領域のみ、2.ダイバータ領域のみ、3.コア-ダイバータ領域連結、という3ステップで実施を予定していたシミュレーション研究について、ダイバータ領域のみのステップ2をスキップして、3.コア-ダイバータ連結シミュレーションを開始し、当初目標であるコアからダイバータまでコンシステントかつダイミナミカルな密度分布制御手法構築達成を目指す。これは研究計画からの遅れに因るものというよりも、研究の進捗によりコア密度分布制御をペレットとガスパフでコア-エッジ個別に制御する方針に転換して密度制御自由度が増えた結果、ダイバータ領域のみのパラメータサーベイ結果として得られるセパラトリクス密度で、コンシステントなコアの運転領域を絞り込むという当初方針が機能しなくなったためである。 イオンと電子のエネルギーEquipartitionに密度制御が与える影響が無視出来ない要因として浮上したため、この効果を考慮したコアのパワーバランス解析を行いPOPCONプロットとしてマップ化および制御ロジックへの取り込みを行い、複雑化した密度制御の見通しを良くする。重水素に対するトリチウム密度比率変化には、重水素NBI入射量に応じたペレット/ガスパフのD/T比率調整を制御ロジックに実装し、一定出力維持制御を実現する。 またペレット入射に対する動的応答を考慮するため、ペレットのアブレーション・ドリフトシミュレーションコードHPI2との円滑な連携を既に確立し、今後ATLASと平行して随時計算を進める。
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