アルツハイマー病(AD)は認知症の主要な原因疾患であり、脳内におけるアミロイドβ(Aβ)とタウの異常蓄積が特徴的な病理として観察される。特にAβ病理はAD初期に出現する。これまでにAβ病理を呈するADモデルマウス血漿のプロテオミクス解析(2D-DIGE法)を実施し、Aβ蓄積を察知する血液バイオマーカーの候補タンパク質スポットを複数見出している。LC-MS/MS解析により、変動した13個全てのスポットに含まれるタンパク質を同定した結果、4種類のタンパク質が増減していることが明らかとなった。いくつかの候補タンパク質は翻訳後修飾を受けており、修飾の異なる分子が二次元電気泳動で分離されていた。そこでモデルマウス特異的変動が見られたタンパク質スポットに対し、アプタマーの探索実験を行った。標的タンパク質への部分的な蛍光標識と、探索用の転写膜の作製に成功した。しかし、膜に高いバックグラウンド蛍光が検出され、標的タンパク質の位置を確認することができなかった。現在別の低蛍光メンブレンを検討中である。また良い抗体が存在するものについてはウエスタンブロッティング法による評価も進めた。高齢マウス血漿だけでなく、Aβ蓄積のないADモデルマウス血漿も調べたところ、マーカー候補タンパク質の増加が見られないことを確認できた。市販抗体を用いたサンドイッチELISAの構築も完了していることから、以後(1)ELISAによる定量的な増減の評価、(2)アプタマーの獲得、(3)アプタマーを使った定量解析の3点を通して、Aβ蓄積を検出するマーカータンパク質を完全同定できると考えている。
|