過去の経験に基づいた行動制御の神経基盤を探るため、ある特定の時期に活性化したニューロン群を特異的に標識するシステムの構築を試みた。ニューロン活動に依存した転写活性制御には、活動依存的プロモータ(Kawashima et al. Nature Met. 2013)を用い、時期特異的な発現には、薬物誘導法を適用することとした。 これまで申請者は、サルから単一ニューロン活動を記録し、前頭前野が高次認知機能において果たす役割を明らかにしてきたため、それと類似の神経基盤をマウスでより詳細に調べようと模索した。なぜなら、現在,サルでは技術的な壁があり,ある活動を示したニューロン群の同定,マッピング,選択的分子操作などができる方法論が確立しているのは,マウスのみであるからである。そこで、マウスというモデル動物を使うことにより可能となる、遺伝子レベル、回路レベルでの詳細なメカニズムに迫ろうと、行動実験を立ち上げつつ、上記を実現するためのアデノ関連ウイルス(AAV)ベクターを作成した。予備実験として、あるニューロン集団が活性化する条件下としない条件下で調べ、目的とするシステムの実現可能性を示唆するデータを得た。今後、予備検討をさらに進め、システムがうまく働くために最適な条件を探り、今まで答えられなかった問題に挑戦する予定である。
|