本研究は、(1)絶滅危惧種クロビイタヤを対象として遺伝的多様性の空間パターンを明らかにし、(2)森林の分断化や生育地周辺の景観特性との関係を、サーキット理論を用いて定量化することを目的とする。サーキット理論は、土地利用のモザイク性が、野生生物の移動・分散にどのような影響を与えるかについて、遺伝子及び景観という二つのレベルの情報を統合し、解析するためのものである。この理論によって計算した抵抗距離と、クロビイタヤの遺伝距離とは有意な相関が見出され、生育地周辺の景観構造 - 特に森林の不連続性が本種の遺伝子流動に負の影響を与えていることが示唆された。
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