研究概要 |
研究初年度にあたる平成25年度は、申請課題である「ヒトの腸管免疫系を発達させたヒト化マウスの作製」を達成すべく、平成25年度に発表した論文(Cell Reports, 3: 1-11, 2013)の中で報告した、ヒト化BLTマウスの小腸組織におけるヒトの腸管関連リンパ組織の発達とHIV感染に関する結果に加え、大腸組織におけるヒトの腸管関連リンパ組織の発達とHIV感染に関する解析を行った。 ヒト化BLTマウスの大腸組織を切片免疫組織学的解析を行った結果、NOD/SCIDマウスをレシピエントマウスとして作製したヒト化BLTマウスには、非常によく発達した腸管関連リンパ組織が認められた。また、ヒトのT細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージといった、全てのヒトの免疫担当細胞がそこに集結していることが明らかとなった。しかしながら、IL-2Rg鎖を欠損させたNOD/SCIDマウス(通称NSGマウス)をレシピエントマウスとして用いて作製したヒト化BLTマウスの大腸には、ヒトの腸管関連リンパ組織の発達は全く認められなかった。 次にHIVを感染させたヒト化BLTマウス(NOD/SCIDマウスを用いて作製)の大腸組織を、in situ hybridization法により解析したところ、非常に多くのHIV感染細胞が大腸の腸管関連リンパ組織に存在していることが明らかとなった。 以上の結果から、IL-2Rg鎖を発現する免疫不全マウス(例:NOD/SCIDマウス)を用いてヒト化BLTマウスを作製することは、ヒトの腸管免疫系を小腸のみならず大腸にも発達させるために非常に重要であることが明らかとなった。さらには、大腸の粘膜関連リンパ組織が、HIVの感染標的組織に成り得ることも明らかとなり、今年度の目標を十分達成することが出来た。
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