ヒトをはじめとするほ乳類の中枢神経は、一度損傷を受けると再生が極めて困難である。一方でゼブラフィッシュなどの魚類は、損傷を受けた中枢神経を自然に回復させることが可能である。本研究では、なぜゼブラフィッシュの中枢神経が再生可能なのかという問いに対して、「LIF(白血病阻止因子)」が一つの答えになり得るという結果が得られた。 本研究では中枢神経再生モデルとして、ゼブラフィッシュの視神経を選択した。視神経を損傷後3日目をピークに、網膜神経節細胞(RGC)でLIF遺伝子・タンパク質の発現が見られた。続いてLIFの下流に存在するSTAT3の活性化を調べたところ、視神経損傷後5日目でSTAT3の活性化が起こることが明らかとなった。一方、LIFのノックダウンによってLIF機能を低下させたところ、STAT3の活性化が抑えられ、さらにSTAT3の下流にあるとされるGAP-43(神経再生に必要な因子の一つ)の増加が抑制されることがわかった。加えて、LIFのノックダウンによって視覚機能の回復が遅れることもわかった。網膜培養実験によって、STAT3シグナルを停止させることで、神経再生(軸索の再伸長)が濃度依存的に抑えられることも確認している。これらの結果より、ゼブラフィッシュ視神経再生には、LIF→STAT3→GAP-43という再生因子カスケードが効果的に働いていることが明らかとなった。上記本研究の成果は、国際学会での報告などを経て査読有り国際論文誌に掲載された。
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