ニワトリ胚4~5日胚の頸髄で特異的に観察される運動ニューロンアポトーシスに関して、アポトーシスが起こるタイミングと領域が、FoxP1の発現パターンとよく一致することから、FoxP1とアポトーシスの関連が予想されていた。これまでの解析では、FoxP1の抑制に働くmicroRNA-9 (miR-9)を利用し、FoxP1の発現抑制を行ってきたが、miR-9の別の標的であるOnecut1も脊髄の運動ニューロンで発現していることが明らかとなり、miR-9を利用したFoxP1特異的な機能解析は難しいと判断した。今年度の研究では、FoxP1特異的に発現抑制を行うshRNAを作製し、解析に用いた。エレクトロポレーション法によりshRNA発現ベクターをニワトリ胚頸髄に導入したところ、FoxP1の発現量を抑えることができたが、アポトーシスの進行は正常と変わらなかった。一方、Hb9エンハンサーを用いて運動ニューロン特異的なFoxP1の過剰発現も行ったが、やはりアポトーシスの進行に影響はなかった。当初の予想に反して、頸髄特異的なアポトーシスの誘導は、FoxP1に依存していない可能性が考えられた。また、ニューロンのアポトーシスに関するこれまで報告などから、JNKの介するリン酸化シグナルが運動ニューロンのアポトーシス誘導に関与していることも考えられたため、JNK阻害剤(SP600125)処理も試みた。現在のところ、アポトーシスに対する影響は観察されていないが、まだ解析数が少ないため、処理方法、濃度などの条件を最適化する必要がある。また、吻尾軸上におけるアポトーシス領域の制御に関しては、Hox遺伝子の関与を想定しており、Hoxc6を頸部で異所性に発現させるとアポトーシスの減少が見られたことから、Hox遺伝子の関与は支持されたが、具体的な作用機序の解析には至っていないため、今後解析を進める予定である。
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