研究実績の概要 |
伊豆諸島御蔵島周辺海域に生息するミナミハンドウイルカ全頭のDNA抽出ならびに多型解析(研究項目1)と集団遺伝学的解析を用いた親子鑑定ならびに血縁解析(研究項目2)、ビデオデータから得られる行動解析との比較(研究項目3)ならびに項目2と3を併合させた群構造の解明(研究項目4)を実行した。 2年間で採取した糞サンプルは154サンプルであり、ビデオデータとの照合から重複サンプルを除くと御蔵島集団100個体のうちの75%に相当する75個体のDNAを得た。100%に達しなかった理由としては、イルカの保全を考慮した入水回数の制限、個体識別のし易さにおける個体のバイアスなどが考えられる。 75個体のうちの54個体のDNAを鋳型とし、11種類の多型マイクロサテライトならびにミトコンドリアDNA(mtDNA)遺伝子における多型解析を行った。その結果、mtDNA遺伝子において検出された4種類のハプロタイプのうちの1ハプロタイプにおいて、申請者らが2013年に発表した和歌山県太地町由来沖合型ハンドウイルカ個体群との同一ハプロタイプが観察され、御蔵島個体群の移出または沖合型個体群の混入が示唆された(Kita et al, 2013)。また、ビデオデータによる観察から、乳母行動がミナミハンドウイルカでは初めて観察されたことから、母親個体と乳母個体との血縁解析を行ったところ2個体に有意な血縁関係は見られなかった。本成果は、学外の共同研究者とともにNature姉妹紙のScientific Reportsに投稿し、現在reviseの段階にある。
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