前年度に確立した、頭部固定状態の覚醒マウスをもちいた古典的条件づけ課題において、シリコンプローブをもちいて内側前頭前皮質 (mPFC) の神経細胞活動を記録した。その結果、高頻度発火型の抑制性神経細胞 (FS IN) が、報酬 (US) および報酬を予期させる音刺激 (CS) に対して、潜時が数十~百ミリ秒、持続時間が一秒弱という速い正の応答を示すことが判明した。光遺伝学的な細胞種同定手法により、その大多数はパルブアルブミン (PV) 陽性細胞であることが確認された。この応答はドパミン受容体1型 (D1R) 阻害薬であるSCH23390の皮下投与により阻害されたことから、D1R経路に依存することが示唆された。さらに、DAT-creマウスをもちいてmPFCより電気生理記録しながらドパミン細胞選択的に光刺激したところ、FS INがUSおよびCS提示時と同様に正の応答を示した。以上の結果より、mPFCに投射する中脳ドパミン神経細胞は報酬に関連する情報をPV細胞に秒未満という速い時間尺度で伝達している可能性が示唆された。 一方で、中脳ドパミン細胞からの電気生理記録については、TH-creマウスの発現選択性にかかる問題や、記録にもちいる電極や手法の条件検討不足により、安定した結果を得ることができなかった。この点については、今年度までに構築した実験系を応用し、次年度以降の研究計画において引き続き検討していく予定である。
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