研究実績の概要 |
本研究では、リーリンシグナルにより制御される神経細胞のゴルジ体構造制御機構を明らかにするために、まず、GM130に着目して研究を進めてきた。研究計画に従い、まずWTのマウスから神経細胞を培養し、Reelin刺激を行った後、GM130, GRASP65, GRASP55, p115およびStk25と結合する14-3-3とPKCzetaのリン酸化状態を免疫沈降物を用いて確認した。興味深いことに、GM130とp115のリン酸化は、30分のReelin刺激によって若干増加していた。そこで更にリン酸化の変化がReelin刺激によって誘導されたものかどうかを明らかにするために、reelin KO 神経細胞を用いて同様の試験を行った結果、GM130とp115で見られたリン酸化の変化は、Reelinシグナルの影響である可能性が非常に高いことが判った。 奈良先端大学院大学の別所泰全教授との共同研究により、GM130のリン酸化部位の同定を質量分析装置を用いて行った。その結果、Reelin刺激によりGM130のSer300のリン酸化が唯一確認することが出来た。この結果は、未報告のリン酸化部位であり、Reelinシグナルによるゴルジ体構造の制御機構と神経細胞の発達機構との関連性、さらに神経系の発達とその後の高次脳機能の分子機構へのゴルジ体ダイナミクスの関与を明らかにできる可能性を示している。 そこで、このSer300のリン酸化がゴルジ体伸長に対する鍵となるのかを明らかにするためにS300A、S300Eの変異体を作製して培養神経細胞に導入した結果、S300A変異体ではReelin刺激によってゴルジ体が伸長せず、逆にS300E変異体ではReelin刺激なしに伸長が見られた。この結果から、Ser300のリン酸化は脳の発達期においてReelinシグナルにより制御される神経細胞の発達に重要な役割を担っている事が示唆された。
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