外来生物が在来生物の絶滅や在来生態系の改変を引き起こすことは、近年の環境科学における重要な問題となっている。しかし、地中に生息する外来土壌動物が及ぼす影響はほとんど注目されていない。本研究の目的は、外来土壌動物の一般的な侵入及び分布拡大パターンを明らかにするために、日本からアメリカに侵入したハタケミミズの侵入経路と分布拡大パターンを解明することである。 この目的を達成するため、平成26年度は日本のハタケミミズの遺伝子解析を行い、平成25年度にアメリカで採集してすでに遺伝子解析を行ってあるサンプルと合わせて系統樹を構築することで、日本からアメリカに侵入した経路の推定を行うことを予定していた。平成26年度の遺伝子解析により、日本の複数の地域からのハタケミミズのサンプルについて、ミトコンドリアのCOI領域の塩基配列を決定した。この結果と、アメリカで採集したハタケミミズの配列を合わせて系統樹を構築したところ、日本に生息するハタケミミズにいくつかの系統が存在し、そのうち少なくとも2つの系統の個体がアメリカにかつて侵入していたことが明らかにされた。アメリカにおけるハタケミミズの分布地域とこの系統の間の関連については、今回の結果からは明瞭な傾向はみられなかった。本研究により、ハタケミミズのアメリカへの侵入は、おそらく一度ではなく複数回であること、および日本の複数の地域の個体群が侵入したことが示唆された。
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