研究課題/領域番号 |
25891008
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古舘 昌平 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (20713192)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 神経幹細胞 / 起源 / p57 / 細胞周期 |
研究概要 |
本研究では、胎生期の神経系前駆細胞のなかでも「分裂頻度の低い」細胞が成体神経幹細胞の発生起源であることを証明する(目標1)。さらに、「分裂頻度の低い」神経系前駆細胞群はいかなる分子メカニズムで作り出されるのかを解明する(目標2)。目標1に関しては、胎生期の「分裂頻度の低い」細胞群のみを遺伝的にラベル・トレースすることによって、この細胞群が成体神経幹細胞の起源であることを厳密に証明しようとしている。平成25年度の活動によって遺伝的ラベルに必要なツール(遺伝子改変マウスやウイルスベクター)の準備が整った。現在は、それらのツールを組み合わせて「分裂頻度の低い」細胞群の遺伝的ラベル・トレースを実際に行い特異性や効率等を評価・検討している。その上で、平成26年度には胎生期の「分裂頻度の低い」細胞群が本当に成体神経幹細胞の胎生期における起源細胞かについての検討を行なう。 二つ目の目標に関しては、平成25年度に「分裂頻度の低い」細胞群に特異的に発現している因子を決定した。具体的には、H2BGFPラベルとFACSを組み合わせる事によって胎生期の「分裂頻度の低い」細胞群とそれ以外の神経系前駆細胞をそれぞれ生きたまま単離し、各細胞群でのmRNA発現プロファイルをmicro ArrayとRNA-sequencingによって解析した。その結果、本研究で既に得ていた候補メカニズム(p57,Notchシグナル)に加えて、複数の候補遺伝子が得られた。現在はこれらの候補遺伝子の中から、特に未分化性維持因子や分化ポテンシャル等に影響を与えうる因子に候補を絞り、より具体的な機能解析を行なっている。例えば、「分裂頻度の低い」細胞群で発現が亢進している遺伝子X(Notchシグナルの構成因子)のノックアウトを行い、このことが成体神経幹細胞の起源細胞の形成に与える影響を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の活動で、遺伝的ラベルに必要なツール(遺伝子改変マウスやウイルスベクター)の準備が整い、既に「分裂頻度の低い」細胞群の遺伝的ラベル・トレースの特異性や効率等の評価・検討に移っている(目標1)。また、胎生期の起源細胞を作り出す分子メカニズムについても既に候補遺伝子の同定を終了し、ノックアウトなどを駆使した具体的な機能解析に進んでいる(目標2)。以上のように本研究は当初の予定の通り順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、胎生期の「分裂頻度の低い」神経系前駆細胞群は本当に成体神経幹細胞の起源細胞なのかを、現在構築中の遺伝的ラベルの系を用いて検討する。 また、胎生期の「分裂頻度の低い」神経系前駆細胞群は(その他の神経系前駆細胞と比較して)どのような分化ポテンシャルを有するのかを検討する。特に、分裂頻度の低い細胞群はニューロンを産生し続けるのか、産生するとしたらどの種類か、等に関して注目して検討する。手法としてはH2BGFPラベルとFACSを組み合わせる事によって、胎生期の「分裂頻度の低い」細胞群とそれ以外の神経系前駆細胞をそれぞれ生きたまま単離しこれをin vitroで培養し分化させることによって、それぞれの細胞群が持つ分化能を評価する。さらに、前述の遺伝的ラベルを利用して、胎生期の「分裂頻度の低い」細胞群とそれ以外の神経系前駆細胞では産み出す細胞の種類がどのように異なるのかをin vivoで解析する。 さらに、成体神経幹細胞の起源細胞を作り出す分子メカニズムの探索を引き続き行なう。例えばp57の高発現が起源細胞の未分化性維持に貢献していることが本研究から既に示唆されているので、今後はp57がいかなるメカニズムで未分化性維持に貢献するのかを検討する。特に、p57が分裂頻度を低くする事を介して未分化性の維持に貢献するのかを検討する。
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