研究概要 |
植物は、微生物由来の因子や自らの細胞のダメージ・破砕成分をパターン認識レセプター(PRR)によって感知し、防御応答を誘導する。しかし、その際、環境ストレス応答に重要なフラボノイドの誘導を抑制するなどトレードオフを伴う。申請者は、モデル植物シロイヌナズナにおいて、微生物認識とダメージ認識に携わるPRRはシグナル伝達・免疫制御の様式も異なること、及びそれらのPRRが協調的・相補的に相互作用することで植物免疫の安全性を高めていることを示してきた。本研究は、シロイヌナズナの多様な環境に生育する生態型(地域個体群)を用いて、PRRのシグナル伝達の様式と耐病性・ストレス耐性との関連性を明らかにし、植物の適応分化に伴うPRRの多彩な役割やその活用様式に関する自然バリエーションの解明を目的とする。まず当該年度において、滅菌培地上で育てた78生態型について、芽生えにショ糖とともにflg22, elf18, Pep1を投与して生重量およびアントシアニン濃度を定量して、それぞれのエリシター応答に関する自然変異を明らかにした。その中には既知のflg22あるいはelf18に非感受性の生態型も含まれており、解析方法の妥当性が確認された。特にPep1応答に変異を示す複数の生態型に着目して、さらに詳細な防御応答や耐病性についての解析を進めている。Pep1受容体はPEPR1・PEPR2の2分子種が存在するためか完全に非感受性となる生態型は解析済みのコレクションの中では得られていない。またPep1処理による生育阻害(生重量)とアントシアニン蓄積の阻害について、特に際立つ相関は見られなかった。
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