研究実績の概要 |
スタート(SART)タンパク質に属するPYR/PYLと呼ばれるアブシジン酸(ABA)受容体はABAのシグナル伝達に中心的な役割を果たすことが、生化学的解析、結晶構造学的解析によって示されている。生化学的な解析から、ABA受容体は低親和性型の2量体型ABA受容体(PYR1, PYL1~3)と高親和性型の単量体型受容体(PYL4~12)に分けられる。ABA受容体と標的タンパク質のプロテインフォスファターゼ2Cを用いた酵母ツーハイブリッドアッセイによるABAセンサーを開発し、これを用いて2量体型ABA受容体のみに作用する化合物を発見し、キナバクチンと名付けた。キナバクチンは、ABAと同程度の1uMの濃度でシロイヌナズナの種子発芽を阻害した。また、マイクロアレイの解析からキナバクチンとABAで制御される遺伝子群はほぼ同じであり、植物体への作用点(孔辺細胞、葉や根での維管束部位)も同様であることが明らかとなった。ABA受容体の変異株abi1を用いた実験から、キナバクチンとABA処理で、大幅にABA応答性遺伝子が低下していた。さらに、9種の単量体型ABA受容体が機能しており、2量体型ABA受容体を欠損した多重変異体(quad変異株)では、abi1変異株と同様に、ABA処理によるABA応答性遺伝子の発現誘導が大幅に低下していた。実際に、quad変異株は乾燥に弱い表現型を示す。以上の結果から、2量体型ABA受容体が植物体の主要なABA応答に中心的な役割を果たしている事が示された。
|