研究課題/領域番号 |
25891017
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
安井 典久 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90467514)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 抗体 / 味覚受容体 / Fab断片 / GPCR / 相互作用 |
研究概要 |
本研究では、味覚受容体T1Rファミリータンパク質の動作メカニズムの解明を見据えて、味覚受容体の細胞外領域に対する機能性抗体の取得と、その性状解析を行うことを目的とする。味覚受容体と抗体の双方について、高品質の精製サンプルを調製し、それらの物理化学的性質と抗体の持つ分子機能とを丹念に調べあげることが、本研究の特色である。 平成25年度では、味覚受容体の細胞外領域の組換えタンパク質の調製および抗体の分子機能を測定する実験系の確立を実施項目として計画していた。以下の研究を実施し、成果をあげることができた。 (1) 所属研究室で取得されていた味覚受容体に対するモノクローナル抗体から、Fab断片を調製する方法を確立した。精製の最終段階にイオン交換クロマトグラフィーを適用することで、高い純度で試料を得ることができた。(2) 調製したFab断片をゲルろ過クロマトグラフィーで分析し、良好な単分散状態であることを確認した。(3) Fab断片と昆虫細胞培養系で発現した味覚受容体細胞外領域の組換えタンパク質を用いて、両者の相互作用をゲルろ過クロマトグラフィーを用いて解析した。両者が1:1のモル比で、安定な複合体を形成することを確認した。(4) 抗体の味覚受容体に対する機能を調べるために、所属研究室において確立されていた蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET)に基づいた味覚受容体のリガンド結合実験系にFab断片を供した。Fab断片の濃度に依存して、FRETシグナルが減少することを観察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度における実施項目として掲げた、昆虫細胞を用いた味覚受容体の組換えタンパク質の生産と、高純度でのサンプルの調製に一定の目処をつけることができた。抗体側に関しても、抗体分子からのFab断片の作製方法と、各種クロマトグラフィーを用いた精製方法を確立した。複数種の抗体について、調製した精製サンプルを用いた相互作用の確認実験を実施している。培養細胞を用いた解析など実施できていない項目はあるものの、抗体の分子機能を評価する実験系の構築とその利用にも着手している。以上のことから、おおむね順調に進展しているものと自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
Fab断片と味覚受容体の精製サンプルの調製方法は確立したので、今後は、主としてFab断片を用いて、味覚受容体との相互作用を物理化学的手法を用いて解析する。具体的には、表面プラズモン共鳴測定法により、Fab断片と味覚受容体細胞外領域間の相互作用の親和性を決定する。 抗体による味覚受容体の分子機能(リガンド結合)への影響を調べるために、前年度で実施したFRETに基づいた実験系の確立とその利用を行う。さらに、等温滴定型熱量測定(ITC)を実施できる環境となった。ITCを用いて、味覚受容体細胞外領域のリガンド結合活性に対するFab断片の作用を解析できる系の構築にも取り組む。 上述の物理化学的な解析に加えて、前年度には実施できなかった培養細胞を用いた解析にも着手する予定である。この実験の実施に当たっては、必要に応じて、専門家の助言を仰ぐことにする。
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