研究課題
気孔は一対の孔辺細胞からなり、孔辺細胞には葉緑体が存在する。孔辺細胞における葉緑体の機能については諸説あるが、不明な点が多い。また気孔葉緑体の形成メカニズムも全く分っていない。本年度は、孔辺細胞に特徴的な葉緑体のクロロフィル自家蛍光がほとんど観察されない変異体gles1 (green less stomata 1) をシロイヌナズナから単離した。電子顕微鏡を用いて孔辺細胞ならびに葉肉細胞の葉緑体の状態を詳細に調べた結果、変異体の孔辺細胞はプラスチドを持っているが、チラコイド膜がほとんど見られなかった。これに対し、葉肉細胞の葉緑体はチラコイド膜を発達させていた。またgles1の孔辺細胞のクロロフィル蛍光を詳細に観察すると、クロロフィル蛍光が全くないもの、かすかにあるもの、野生型程度にあるものの3種類に大別されることが分かった。その割合を調べるために、孔辺細胞をプロトプラスト化し、セルソーターを用いてクロロフィル蛍光強度を測定した。その結果、変異体においてクロロフィル蛍光が低下している孔辺細胞は、7割以上を占めていることが分かった。これらの解析から、gles1変異体は孔辺細胞に含まれる大半のプラスチドにおいて、葉緑体膜系を特徴づけるチラコイド膜の形成が阻害されていることが明らかになった。さらにgles1変異体の気孔におけるCO2応答性は低下していたことから、その原因遺伝子は気孔の葉緑体形成とCO2応答性に重要な働きを持つことが示唆された。現在、原因遺伝子の同定を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初、研究目標としていた気孔の葉緑体分化が阻害された変異体をシロイヌナズナから単離することに成功した。この変異体は葉肉細胞の葉緑体形成には影響を及ぼさないことから、気孔葉緑体の機能及び分化メカニズムを解明する上で重要なツールになると考えられる。この変異体をさらに詳しく解析することで、なぜ気孔には葉緑体が存在するのか、という根本的な疑問に一つの答えを出せると期待される。
気孔における葉緑体の役割を明らかにするために、気孔の葉緑体が分化していないgles1変異体を用いてさまざまな環境シグナルに対する気孔開閉の応答を調べる予定である。具体的には光、アブシジン酸、CO2濃度に対する気孔開閉応答を測定する。また、変異体の原因遺伝子をマッピング及びシーケンスにより同定し、その原因遺伝子の機能解析を進めることで、気孔葉緑体形成の分子メカニズムを明らかにする。
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