研究課題/領域番号 |
25891025
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
浅井 智広 立命館大学, 生命科学部, 助教 (70706564)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 光合成反応中心 / 緑色硫黄細菌 / キノン / 広宿主域プラスミド / 過渡吸収変化 |
研究概要 |
本研究課題では、緑色硫黄細菌のRCにおけるメナキノン分子の二次電子受容体と最終電子受容体として機能を検証することを目的としている。具体的な研究内容として、キノン分子の1.結合部位の構造、2.二次電子受容体としての機能、3.最終電子受容体としての機能、という3つを対象にして解明を目指す。本年度は、緑色硫黄細菌のRCの大量調製法の確立、キノン分子が関わる電子移動反応を観測するため手法であるレーザー誘起過渡吸収変化の測定条件の最適化とキノンへの電子移動の観測を推し進めた。 緑色硫黄細菌のRCを簡便且つ大量に調製するため、これまでの研究で作製していたHisタグ付加RCを発現する好熱性の緑色硫黄細菌Chlorobaculum tepidumの変異株を改良を行った。C.tepidumにおいて広宿主域プラスミドによる外来遺伝子発現系を新たに構築し、RCの高発現化変異株の作製に成功した。白熱球を光源とした光照射大量培養、酸素濃度1 ppm以下での精製操作、HisタグとStrepタグのタンデムアフィニティクロマトグラフィによって、作製した変異株から高い光電荷分離活性を保持したRC標品を大量に調製する方法を確立した。得られた大量の機能的なRC標品を用い、サブナノ秒からミリ秒までの時間領域、400 nmから900 nmまでの波長領域を網羅したレーザー誘起過渡吸収スペクトル変化の測定を行った。得られた時間分解吸収スペクトル変化のグローバル解析から減衰随伴スペクトルを計算し、末端電子受容体よりも初期の還元型電子受容体の再酸化に由来すると考えられる酸化型一次電子供与体の速い再還元を検出することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的の達成には、キノン分子が関係する電子移動反応の観測方法の確立が最も重要である。本年度の研究によって、大量のRC標品を安定的な調製法が確立され、サブナノ秒からミリ秒までの時間領域、400 nmから900 nmまでの波長領域を網羅したレーザー誘起過渡吸収スペクトル変化の測定に成功した。予定していた変異体RCの生化学的な解析に着手出来ていないが、大量調製法と機能解析法が概ね確立できていることから、次年度の研究で十分に推進できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究で、高速の過渡吸収分光法による緑色硫黄細菌のRCの電子移動反応を観測する測定系を構築できた。研究最終年度である本年度は、構築した測定系によってキノン分子の電子受容体としての機能の検証を優先して進める。野生型および部位特異的変異体RCで過渡吸収測定を行い、キノン分子の過渡的な還元信号を探索する。電子移動理論をもとに測定結果を速度論的に解析することで、キノン分子の酸化還元電位と鉄硫黄クラスターFXなどの他の電子伝達コファクターとの距離を推定できると考えている。 解析する部位特異的変異体RCは、当初の計画通り、予想キノン結合部位に保存されたArg638のAla置換体、キノン分子のカルボニル基を主鎖アミド基の間の水素結合が推定されるLeu668のGlyまたはTrp置換体、鉄硫黄クラスターFXの配位子であるCys527とCys536のAla置換体を予定している。過渡吸収測定による電子移動反応の解析に加え、部位特異的変異体RCの色素分析によるキノン含量の測定とエーテル処理によるキノン分子の除去と再構成の実験を並行して進めることで、キノン分子への電子移動反応の決定的な帰属とアミノ酸残基レベルでのキノン結合部位の同定を目指す。
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