本研究課題では、緑色硫黄細菌のRCにおけるメナキノン分子の二次電子受容体と最終電子受容体としての機能を検証することを目的としている。昨年度までの研究で、Hisタグ付加RCを高発現する緑色硫黄細菌Chlorobaculum tepidumの変異株の作製し、その変異株から単離したHisタグ付加RC標品で起こる電子移動反応を、サブナノ秒からミリ秒までの時間領域、400 nmから900 nmまでの波長領域を網羅したレーザー誘起過渡吸収スペクトル変化の測定で追跡することに成功している。本年度は構築した測定系によるメナキノン分子の電子受容体としての機能を調べた。 Hisタグ付加RC標品で起こる電子移動反応を過渡過渡吸収変化で追跡したところ、測定時にもちいる溶液組成によって得られるスペクトルとキネティクスが大きく変化することがわかった。特に加える酸化還元メディエーターの分子種と溶液粘性に依存し、光酸化した一次電子供与体の再還元経路だけではなく、最終電子受容体も変化した。速度論的な解析の結果、これまで緑色硫黄細菌のRCの末端電子受容体と考えられていた鉄硫黄クラスターFA/FBではない未同定の電子受容体が、RC外部にある酸化還元メディエーターに電子を伝達している可能性が浮かび上がった。外部電子受容体として機能した酸化還元メディエーター分子の酸化還元電位が比較的高いことや、分子構造がキノンに類似していたことから、未同定の電子受容体はメナキノン分子であることが推定された。
|