研究実績の概要 |
1. POLG1変異細胞の作製に向け、CRISPR/Cas9ベクターの構築を行った。導入する変異としては、Polg1変異マウスに導入したD181Aに相当するD198Aおよび気分障害を併発する慢性進行性外眼筋麻痺症候群の家系において認められるY955Cを選択し、それぞれの変異につき配列の異なる3通りのベクターを作製した。今後は、まずこれらのベクターをHEK293細胞に導入し、POLG1標的配列の切断効率を確認する。その後、切断活性が確認できたベクターを用いて、iPS細胞にPOLG1変異を導入する予定である。 2. H25年度に樹立したiPS細胞の品質確認実験として、免疫染色およびqRT-PCRによる未分化マーカーの発現評価を行った。また、胚葉体形成を介した三胚葉分化誘導実験を行い多能性についても検討した。樹立したiPS細胞はいずれも未分化マーカーを発現し、多能性を有することが確認できた。加えて、無血清凝集浮遊培養法を用いてiPS細胞の神経分化誘導を行った。Koyanagi-Aoi, et al. 2103に従い、誘導開始14日後の細胞を、神経前駆細胞マーカーであるPSA-NCAMの抗体で染色し、FACSによりその陽性率を評価した。複数のiPS細胞クローンについて解析を行った結果、ミトコンドリア関連遺伝子変異を有する双極性障害患者由来のiPS細胞では、コントロール細胞と比較してPSA-NCAM陽性率が低く、神経分化過程における何らかの異常が示唆された。今後は、この患者由来iPS細胞および分化誘導した神経細胞におけるミトコンドリアの機能・形態変化およびmtDNAの欠失の有無について検討し、神経分化の異常とミトコンドリア関連遺伝子変異の関連を明らかにする。また、POLG1変異細胞においても同様の解析を行い、mtDNAの変異が神経細胞の分化および機能成熟におよぼす影響について検討する予定である。
|