研究課題/領域番号 |
25892001
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
水川 葉月 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (60612661)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | ネコ / PBDEs / 甲状腺機能亢進症 / 血清 / PCBs / 第I相反応 / 第II相反応 |
研究概要 |
これまでにペットのイヌ・ネコ血中およびペットフード中有機ハロゲン化合物を分析し、ネコ血中水酸化ポリ臭素化ジフェニルエーテル(OH-PBDEs)濃度はイヌに比べ高値であることを明らかにした。また、するキャットフード中には、海洋天然生成物であるメトキシPBDEs(MeO-PBDEs)が高濃度で残留しており、MeO-PBDEsからOH-PBDEsへの脱メチル化も報告されていることから、ネコの血中OH-PBDEsの起源は、餌から摂取したMeO-PBDEsが代謝によって脱メチル化され血中に残留したものと推察された。 そこで、本研究ではペットのネコに着目し、研究報告例の少ない液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いたOH-PBDEsの分析法を開発し、北海道大学大学院獣医学研究科獣医内科学教室の協力を得て採取したペットのネコを対象に、血中に残留するこれら代謝物の分析を検討した。LC-MS/MS を用いたOH-PBDEsの分析報告例は僅かであり、異性体分離が困難である等の問題が報告されている。本研究でも、2種類のLCカラム(Acclaim Surfactant Plus:DionexとGemini NX:Shimadzu)を用いて測定条件を検討したところ、4臭素化体の分離が困難であったため、今後も継続してPBDEs代謝物の主要異性体の分析方法を検討する。検討点として、カラムの検討、溶媒の検討を行うとともに、多くの異性体で分析法を検討する。 分析に供試するペットのネコの血清は北海道大学大学院獣医学研究科獣医内科学教室の協力を得て採取した。北海道大学動物医療センターではイヌと比べネコの患者数が少ないが、当該年度は約50検体の血清を採取した。これらの試料は分析法を立ち上げ次第、PBDEsおよびOH-PBDEsに供試する。 今後は、ネコ血清中OH-PBDEsの分析に加え、肝ミクロソームなどを用いたIn vitro代謝実験を行い、ネコの第I相水酸化代謝能や第II相抱合体化能の解明とリスク評価が課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LC-MS/MSを用いた水酸化PBDEs(OH-PBDEs)の分析法開発に関しては、異性体分離が困難であり来年度も継続して検討を進める。ペットのネコ血清採取と水酸化代謝物および抱合体化物の分析に関しては、北海道大学大学院獣医学研究科獣医内科学教室の協力により順調に試料採取を行っている。さらに、次年度以降に実施予定であった代謝実験に関しても始めることができ、肝ミクロソームの調整や活性測定準備を始めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として、LC-MS/MSを用いたOH-PBDEsの分析法検討を継続して進める予定である。分析法が立ち上がり次第、これまで採取したネコ血清中OH-PBDEsを分析する。 さらに、肝ミクロソームなどを用いたネコの第I相水酸化代謝能および第II相抱合代謝能の活性を測定し、代謝機構の解明を行う。代謝実験は、肝ミクロソーム、バッファー、有機ハロゲン化合物を混合、保温後、酸化還元酵素を加え、代謝反応を促進させる。反応停止後に化学分析を行い、親化合物と代謝物を定量する。代謝物の生成量や異性体パターンを解析して有機ハロゲン化合物に対する代謝能力の種差を解明する。さらに、種差に関与する代謝酵素を特定するため、第I相、第II相反応に関わる薬物代謝酵素(CYPs)や抱合酵素(UDP-GT、GST、SULT)の活性を測定し、生物種固有の代謝機構を分子生物学的に解明する。酵素活性は薬物代謝酵素のアッセイ法として公知のAROD法や、抱合酵素のUDPGT、GST活性測定により算出し、第I相・第II相代謝反応の種差を明らかにする。 これらの解析結果を基に、ペットの健康リスク評価の指針策定を試みる。 以上の研究成果については、国内外の学会で発表するとともに、国際学術誌に欧文論文として投稿し、世界に向けて成果を発信する。
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