平成25年度は、ヒトメラノーマ細胞を用いて、miR-203のメラノソーム輸送及びそれに関与する標的遺伝子の同定を行った。 ヒトメラノーマ細胞にmiR-203を導入すると、メラニン産生に重要なチロシナーゼのタンパク発現が上昇し、免疫蛍光染色においてメラノソームのマーカーであるHMB45が核周囲に集積することが明らかとなった。また、ウエスタンブロッティング及びルシフェラーゼアッセイにより、細胞内の物質輸送に関わるKIF5bがmiR-203の標的遺伝子であることが明らかとなった。さらに、siRNAを用いてKIF5bをノックダウンすると、miR-203を導入したときと同様にチロシナーゼの発現上昇とメラノソームの核周囲における集積が認められた。 以上のことから、miR-203はKIF5bを標的とし、その発現を抑制することでメラノーマ細胞におけるメラノソーム輸送の阻害及びメラニン顆粒の産生亢進に関わっていることが示唆された。以上の成果をJournal of Investigative Dermatology誌に投稿し、受理された。 本研究で明らかとなったmiR-203の機能がin vivoでも再現可能かを、ヌードマウスに移植したメラノーマ細胞にmiR-203を局所投与して、組織学的に免疫蛍光染色で検証を行ったが、光学顕微鏡では細胞内のメラノソームの微細な局在を評価することが困難であった。 miR-203がメラノーマにおけるがん抑制遺伝子であることが明らかとなりつつあるが、メラニン産生やメラニン輸送といったメラニン細胞に特異的な機能にmiR-203が関与することが、本研究より明らかとなった。したがって、miR-203はメラノーマの発生や進行に中心的に関与するmiRNAであると考えられ、miR-203の発現を調節することはメラノーマの治療に有効である。
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