研究課題/領域番号 |
25892015
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上船 雅義 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (90559775)
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研究期間 (年度) |
2013-08-30 – 2015-03-31
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キーワード | 生態学 / 植物 / 昆虫 / 害虫管理 / 生物間相互作用 |
研究概要 |
1 天敵誘引 100倍希釈したプロヒドロジャスモン(以下、PDJ)をスプレー処理した植物の天敵誘引性評価のために、コナガの天敵としてコナガサムライコマユバチ、アブラムシの天敵としてチャバラアブラコバチとヒメカメノコテントウ、アザミウマの天敵としてタイリクヒメハナカメムシを用いて研究を行った。植物は、コナガとアブラムシの食害を受けるアブラナ科植物のケールとアザミウマの食害を受けるナスを用いて研究を行った。PDJスプレー処理したケールと水スプレー処理したケールを用いて選択実験を行った結果、チャバラアブラコバチではPDJ処理ケールに誘引効果が認められなかった。しかし、コナガサムライコマユバチは8割の個体がPDJ処理ケールを選好し誘引効果が認められ、ヒメカメノコテントウは約6割の個体がPDJ処理ケールを選択し誘引効果がある傾向を示した。PDJスプレー処理したナスと水スプレー処理したナスを用いて選択実験を行った結果、PDJ処理ナスはタイリクヒメハナカメムシに対する誘引効果が認められなかった。 2 害虫忌避 100倍希釈したプロヒドロジャスモン(以下、PDJ)をスプレー処理した植物の害虫忌避性評価のために、モモアカアブラムシを用いて研究を行った。植物は、コリアンダーとスイートバジルを用いて研究を行った。PDJスプレー処理した植物の匂いと空気をモモアカアブラムシに選択させた結果、PDJ処理コリアンダーには忌避性の効果が認められなかったが、PDJ処理スイートバジルでは約6割の個体が空気を選択し忌避性がある傾向が示された。 3 天敵誘引物質と害虫忌避物質の分析 PDJスプレー処理ケールと水スプレー処理ケールの匂い分析をGC-MSを用いて行ったが、PDJ処理と水処理の分析結果の傾向が分析ごとに逆転し、PDJ処理特有の揮発性物質を探索できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの達成度がやや遅れ気味の評価を行った理由は、天敵誘引物質と害虫忌避物質の分析に関して、分析結果のバラつきが大きく良い研究成果を上げられなかったからである。しかし、天敵誘引性に関しては、コナガサムライコマユバチ、チャバラアブラコバチ、ヒメカメノコテントウ、タイリクヒメハナカメムシの4種の天敵に関して評価を行い、そのうちPDJスプレー処理したケールにコナガサムライコマユバチ対して誘引性があることと、ヒメカメノコテントウに対して誘引傾向があることを明らかにした。このため、天敵誘引に関しては本年度の計画を十分達成していると考えている。害虫の忌避性に関しては、モモアカアブラムシに対する評価しか行えていないが、PDJスプレー処理したスイートバジルにおいて忌避性がある傾向を示せたので、ある程度計画を達成できたと考えている。また、天敵誘引と害虫忌避のための植物を選定できたため、平成26年度の野外試験に向けた本年度の計画を達成できたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
天敵誘引に関しては、PDJスプレー処理したケールにおいてヒメカメノコテントウに対する誘引傾向が確認されたため追試を行い、誘引効果を明らかにする。また、重要害虫ハダニの土着天敵としてミヤコカブリダニを用い誘引試験を実施し、誘引可能な天敵種を増やすための検討を行っていく。 害虫忌避に関しては、PDJスプレー処理したスイートバジルにおいてモモアカアブラムシに対する忌避傾向が確認されたため追試を行い、忌避効果を明らかにする。また、ハダニの忌避試験を実施し、忌避可能な害虫種を増やすための検討を行っていく。 天敵誘引物質と害虫忌避物質に関しては、天敵誘引性があったケールと害虫忌避傾向があったスイートバジルを用いて匂い分析を行う。匂い分析は、結果を安定させるために匂いの捕集法などの分析手法の見直しを行い、天敵誘引または害虫忌避における候補物質の選定を目標に分析を行う。 本年度の研究成果をもとに野外試験に使用する植物を選定した結果、野外における天敵誘引効果の検証にはケールを、害虫忌避効果の検証にはスイートバジルを用いることを決めた。また、実験圃場において地植えによる植物の栽培が困難な場合は、プランターまたはポット植えの植物を利用することに変更し、野外条件においてPDJスプレー処理したケールの天敵誘引性とPDJスプレー処理したスイートバジルの害虫忌避性を評価する。
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