研究概要 |
本研究では, 大腸菌を宿主に, 再生可能資源であるグルコースからの“非天然型”バイオケミカルである3-ヒドロキシブチルアルデヒドの効率的生産技術を開発することを最終目的としている。これを達成するためには, 以下の3つの研究を行う必要がある。まず, 大腸菌に内在する3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元酵素遺伝子を同定すること, 次に, 大腸菌を3-ヒドロキシブチルアルデヒドの高生産に適した宿主へと分子育種すること, そして, スケールアップ可能な最適生産プロセスの開発を行うことである。 本年度は, 3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元酵素遺伝子の同定に取り組んだ。具体的な手法としては, 大腸菌の一遺伝子欠損株ライブラリーであるKeio collectionを用いて, 3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元活性を有すると考えられる5つのアルコール脱水素酵素遺伝子 (adhP, eutG, yiaY, yjgB, yqhD) 欠損株にこれまでに構築している1,3-ブタンジオール生産ベクターを賦与し, 1,3-ブタンジオールの生産性を評価した。その結果, adhP, eutG, yqhDそれぞれを欠損した3株で1,3-ブタンジオール生産性の顕著な低下が確認された。この結果は, これらの3遺伝子のコードする酵素が3-ブチルアルデヒドの還元活性を有することを示唆している。AdhP, EutG, YqhDについては, これまでに広く生化学的に特性化されているが, これらが3-ブチルアルデヒドの還元活性を有するという報告例は存在しない。そのため, 本研究により3-ヒドロキシブチルアルデヒド還元活性を有することが生化学的に明らかになれば, 学術的に意義のあるものになると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標としては, 大腸菌に内在する3-ヒドロキシアルデヒド還元酵素の同定と, その生化学的な解析であった。これまでに, 遺伝子の同定を完了しており, それらの酵素の生化学的な知見に関する既報が存在することから, 計画通り順調に進行している, と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の結果をもとに, 多重欠損株を作製したのち, 3-ヒドロキシブチルアルデヒド生産を評価する。加えて, 宿主の代謝系を最適化するとともに, スケールアップ可能なプロセス開発を行う。
|